お知らせ

新保ゼミは、2010年度に再開します。
2008年9月からインドのエネルギー資源研究所 (TERI: The Energy and Resources Institute) で研究する機会を頂戴しました。 そのため、2008年度と2009年度は、ゼミの募集をしませんでした。 2010年度からゼミを再開します。 2010年3月に新保ゼミ11期生を募集します。

About Photographs

都市の公害

smoke デリーのインドラプラスタ発電所の煙突が吐き出す黒煙。 どうして,先進国と同じ轍を踏んでしまうのでしょうか。 排気ガス,粉塵も相俟って,着ている衣服が驚くほど汚れます。 着ているものだけならよいのですが, 1年以上もここを歩き続けた身には,咽や肺への影響が心配です・・・                                                                                                                                    

drain 1年以上を暮らしたデリー郊外のシャカルプールにある家の近所のドブ。 決して都市スラムではありません。 雨期にどういうことになるか想像できますか? ゴミをポイ捨てするという習慣が,このような状況を生み出します。 どうせ不可触民(untachable)と呼ばれる差別された人々が掃除するんだという意識がなくならないかぎり,こうした状況は改善されないように感じます。 もちろん不可触性は,独立後の憲法17条で禁じられています。 持続可能な社会の形成には,人々の意識改革が不可欠です。

農村と貧困

drain インド ビハール州の州都パトナから車で1時間ほど南下した農村の家屋。 この家だけが特別なのではありません。 沿道には,このような雨,風をやっとしのげるだけの家屋が続きます。 冬には,夜寝ている間に凍死者が出ます。多くは子供です。 子供の死亡率が高いから,多くの子供を持とうとします。 こんな小さな家屋に,8人から10人が暮らしていることも珍しくありません。 そうすると十分に食べさせることができません。 「貧困の罠(poverty trap)」に陥っています。 もちろん電気もなければ,トイレもありません。 野外排泄をする姿をいやというほど目にします。 飲料水は,井戸水ですから,排泄物が混ざってしまいます。 それが原因で感染症に患う人も多いと聞きます。 世界全体では,下痢のせいで15秒に1人の子供が死亡しているというデータも報告されています。

cow dung 上と同じビハール州の農村にて。 このような世帯が調理や暖を取るのに使う燃料は,薪または牛糞です。 薪といっても,実体は枝です。 写真の親子が頭の上に載せているのは,牛糞です。 薪と牛糞を集めるのは女性の仕事です。 特に農村では,いまだに女性蔑視の風習が存続しています。 女の子だからという理由で,学校に行かせてもらえない子供もいます。 都市には,マニュアル・スカベンジャーと呼ばれる,素手で人の糞便を処理する仕事を強いられている女性達もいます。 スカベンジャーを雇う裕福な人たちは,その仕事に対し残飯と月に5ルピー(約10円)の賃金しか支払いません(ローズ・ジョージ『トイレの話をしよう』より)。

dung cake 集められた牛糞は,素手で団子状にして,家屋の壁にせんべいのように貼り付けて乾燥させて,燃料として燃やします。これも女性の仕事です。 写真の右側にある家屋の壁一面に貼り付けてあるのが牛糞です。 このような燃料は,Cow DungあるいはDung Cakeと呼ばれています。 その他,牛糞から発生するメタンガスを収集して利用するGobar Gasと呼ばれる燃料もあります。 Cow DungやGobar Gasのようなバイオ燃料の利用は,持続可能な発展に必要な手段です。 これを地域で集約的に行う仕組みを構築すれば,素手で牛糞を触ることを原因とする疾病や,女性の地位の向上にもつながるはずです。

kerosene 世界には,電気による灯のない生活を余儀なくされている人々が10億人いるといわれています。その4割をインドがしめます。 日が暮れると人々は,写真のように灯油の入ったボトルの口に布などを詰めて,そこに火をつけて灯をとります。 子供たちは,日が暮れたあとに本を読んだり,勉強することもできません。 ちょっとしたことで火傷をしたり,煙による家庭内公害も深刻です。 電化されていないインド ラジャースタン州のビラト村の農家にて。

持続可能な発展に向けて〜分散型再生可能エネルギーの利用

solar panel 2008年9月末から2010年2月20日まで研究のベースにさせていただいた, インド エネルギー資源研究所(TERI: The Energy and Resouces Institute)では,「10億人に灯を(LaBL: Lighting a Billion Lives)」というキャンペーンを実施しています。 このキャンペーンでは,電化されていない農村家計に太陽電池ランプを貸し出して,灯油の使用による弊害を減らす試みが実施されています。 太陽電池ランプは,灯油の生炊きよりは十分に明るく,またわれわれの産業連関表を用いた分析によれば,CO2の排出量も半分以下になることがわかりました。 LaBLでは,50世帯につき1つの家計で太陽電池の充電をします。 写真は,上と同じラジャースタン州の電化されていない農村の充電家計に設置された太陽電池パネルです。 LaBLの試みは,農村の完全電化に向けた過渡的なものではありますが,分散型の再生エネルギーの利用は,持続可能な発展に不可欠な技術であることはまちがいありません。 LaBLについては,太陽電池ランプのLCA分析の共著者である牧田りえさんのインド通信「太陽光発電ですべての人々に灯りを」(『サステナ』,2009年11号,72-75頁,東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S))もご覧ください。

wind park 2009年12月には,塾を代表してデンマークのコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議,COP15に出席させていただきました。 デンマークでは,電力供給の20%を風力発電でまかなっています。 まさにエコ大国です。写真は,ウインド・パークをと呼ばれる, 海上に設置された風車群の一部です。 理工学部の植田先生と訪問したデンマーク工科大学のハンセン教授によれば, 風力発電のような分散型のエネルギー・システムを地域に導入するには, 立地,設計,運営も含めて十分に教育された人材が不可欠で, 風力発電のみならず太陽光発電についても同じことがはてはまるとおしゃっていました。 持続可能な発展のためには,教育による人材開発,特に貧困層に対する教育の必要性は,強調してもし過ぎることはないと思います。