慶應義塾大学 商学部・商学研究科

新保一成 研究室

開発と環境の経済分析...

2017 India Study Tour(9/10〜9/17)

以下の文章は,現地滞在中に私がFacebookに投稿した散文です.ご笑覧ください. ツアーに参加した学生がレポートを書いています.出来次第ここにアップします.

9月11日 Government Primary School, Open School訪問

Sulabh International デリー西部にある公立小学校とそこから少し離れたデリー最大のスラム街にあるオープン・スクールを訪問しました. インドのfirst boys and first girlsはお金がかかるけれども私立の学校で質の高い教育を受けることができます. 公立小学校へ通うのは貧しい家庭の子どもたちです.ここでは6グループに分かれて学生たちがか考えた授業をやってきました. いつものことですが,インドの子供たちの習得のはやさには驚かされます.

Sulabh International オープンスクールでは学校へ通うことのできない子供たちにNGOが教育の機会を提供しています. 2番めの写真はスラムの中に点在するオープンするクールにおける授業の様子です. ここへ来ることができる子供たちもこの巨大なスラムに暮らすほんの一握りの子供たちに過ぎないと想像します.

Sulabh International スラムから少しはずれたオープンスクールで子供たちと交流する前に,Rameshさんの案内でスラムの中を歩かせてもらいました. 3番目の写真の左すみの女の子,着ている服が全然違います. スラムの中では,このような子どもの数のほうが圧倒的に多いのです. その女の子の右に立っている女性たちも,高校生,大学生ぐらいの年齢に見えます. Shobhanaさん,Raviさんが運営しているDISHAというNGOは,このように学校へ行けない子供たちの教育と職業訓練を行っています.







9月12日 Honda Motorcycle & Scooter訪問

Sulabh International Hondaの2輪工場(Honda Motorcycle & Scooter, Tapukara, Rajasthan)を訪問しました. この会社の社長さんは慶應義塾体育会端艇部のOBで,端艇部の関係をご紹介をいただきました. 全長500m弱にわたる工場は,日本の最先端の技術が導入されていますが,ラインには従業員が隙間なく並び,賃金の安い開発途上国ならではの一面もあります. 生産ラインに並ぶ従業員は全体の70〜75%を占め,全て契約労働者だそうだです. 契約労働者の離職率は高いそうですが,補充も簡単にできるという無制限労働供給の一面もあるようです. 社員食堂で昼食もご馳走になりました. 日本円にしてみれば1食20円あたりのランチは社員であれば誰でも食べられるそうです. 20円つまり12ルピーぐらいですが,質,量ともにレストランで500ルピー払うのと変わりませんでした. インドの二輪需要はまだまだ伸びる余地があるそうで,道路インフラの整っていない農村地域をターゲットにした低価格のモデルが主力製品の一つです. 四輪や二輪の需要量に飽和感のある先進国では,1台あたりの公害排出量を減らす企業努力が地域全体の公害削減につながりますが,需要が拡大する途上国では企業努力が全体量削減につながらないというジレンマも抱えています. もちろん企業努力をしない場合より社会にとってはよいわけですから,企業努力が必要なことに変わりはありません. インドでは,四輪,二輪の需要拡大に対応した道路インフラの整備が全然追いついていません. ただでさえひどい渋滞におそらく世界で最悪の運転マナーですから,事故が起きないわけがありません. 写真は早朝にHondaに向かうときに遭遇した事故です.余裕をみて出発したのですが,遅刻してしまうのではないかとヒヤヒヤでした.

9月13日〜14日 JEEViKA

Sulabh International ビハール州で州政府と世界銀行が展開しているJEEViKAというプロジェクトを見るために,ボードガヤの村々を訪問してきました. ビハール州はインドで最も貧しい州の一つです. めったに見ない外国人を見ようと子供たちが集まってきますが,ほぼ全員が靴を履いていないし,裸の子どもも珍しくありません(写真1).

Sulabh International デリーの中心ではめったに野良牛を見ることが少なくなりましたが,ここは牛とその糞だらけで,学生たちはかなりビビっておりました(写真2).

Sulabh International Sulabh International JEEViKAは主に女性の地位向上を目的にした複数のプログラムで構成されています. 女性の地位向上とは,もちろん雇用や政治的な面での社会進出ということもありますが,まずは家庭内における女性の自由を確保することがインドでは最重要課題です. そのためにSHG(Self Help Group)という10人から15人の女性で構成される自助グループを形成し,SHG内でのグループ貯金や資金の相互融通,生産活動などを通じて,女性に経済的なパワーを持たせて家庭内でのイニシアティブを取れるようにします. そうすることで子どもへの教育投資が増えるなど将来的なリターンを増やすことも期待されます.JEEViKAの特徴は,SHGを底辺に置く階層構造を作りあげ,適切な資金運用等に関するPDCA(Plan-DO-Check-Act)サイクルを構成し,さらにプロジェクトで配分された資金を基金化することに持続的な組織に作り上げていくことにあります(写真3, 4) トイレがないことも女性にとっては大問題です.SHGでは,その点についても議論がなされます.最後に訪れた村では,政府が勝手に作った便所は物置と化していました. ところが,SHGで作ることをこと決めて,自分達の資金で建てた共同便所は便所として使われていました. 「中を見せて」とお願いしましたが,断れました.おかげでご飯がおしく食べられています. この村は,ビハール州でも最下層のカーストが暮らす村だそうで,少々危険な目に遭遇しそうでしたので,その場を早々に退散しました.







9月15日 Bodhgaya観光

Sulabh International 15日はブッダガヤを散策.マハボディ寺院に残る菩提樹の下で,覚りを開いたシッダールタが仏陀になったと言われるこの地には,各国のお寺が集まっています. 午前中は,元気な全員でマハボディ寺へDISHAのRameshさんと参拝です. 以前来たときには終始土産物屋につきまとわれとても嫌な気分になりましたが,入場のセキュリティが随分と厳しくなって,ゆっくりと歩けるようになっていました.菩提樹の前で覚りを開いた気分になって写真撮影.(写真1)

ここで帰国する2名を空港まで送り届け,午後はRameshさんと車でラージギルまで行くグループ,ブッダガヤのお寺まわりをするグループに分かれました. 私は9年前にラージギルに行ったことがあるので,お寺まわりに参加しました. 日本寺では,お経を読む,坐禅を組む経験が出来ました. わたしは大腿四頭筋と臀筋が固く,坐禅ポーズを取れずにただのあぐらで勘弁してもらいました. たまたま日本から来ていた服部僧侶のお話も伺うことができ,有意義な時間を過ごすことが出来ました. 服部さんとは帰国時に成田空港のトイレで遭遇し,これまたぶっくりでした.

9月16日〜17日 Kolkata観光

Sulabh International Sulabh International 16日はコルカタに飛行機で移動.この日のコルカタは大渋滞でちーとも車が進みません. 私と体調のすぐれない一人をホテルに残し,他はタゴール・ハウスへと向かいました. 私は部屋割りとチェックインを済ませ,次の経由地であるVictoria Memorialに徒歩で向かいました. しかし,タゴール・ハウス組は出発したものの道路の大渋滞にはまりタイムアウトで,私だけがVictoria Memorialを散策することになってしまいました. Victoria Memorialに歩いて向かう途中,早足で小生を追い抜く中年男性が,小生の数メートル前で鍵を落としました. 走って追いついて鍵を渡すと,
「仕事終わりで,これから学校へ通えない子どもちの教室へ教えに行く所で,この鍵がないと教室へ入れないんだ,ありがとう!」
彼は急いでいたのですが,
「Victoria Memorialに行くのか?案内しよう」
とほとんど小走りで,Victoria Memorial近辺も案内してくれました.
「何処からだい?仕事は何?」
嘘ついてもしょうがないので,
「大学の教授」
「そうかい.それじゃユーをプロフェッサーと呼ばせてくれ」
案内されたのは,Victoria Memorialの道向にあるタゴールに関連した場所で,そこには学生が作成したモニュメント(写真1)や,無料で観劇できるホール,タゴール学校のような広場あり,大学生たちがたくさん集う大学のキャンパスのような所です. その一つのグループがギターを伴奏に歌を歌い寄付を募っていました(写真2). グループの一人が小生の所に来て
「学校へ通えないストリート・チルドレンのための募金活動なんだ.ぜひご協力を」
と話しかけてきました.私は100ルピーぐらい寄付しようかなと思ったのですが,このおじさん
「プロフェッサーになんてことをお願いするんだい.他あたりな」
とピシャリと遮って, Victoria Memorialに急ぎました.これがおじさんに妙なヒントを与えてしまったようです. ほぼ Victoria Memorialについた頃,
「教室の黒板がホロボロなんだ.寄付してくれないか?」
おっ,来たな.と思いつつ500ルピーを渡して
「足しにしてくれ」
と言うと
「あと3枚.それで買える.俺の月給を知ってるか? 16000ルピーだ.それで家族を食わせにゃあかん.とても教室の黒板を新調する余裕なんてないいんだ.頼む!」
ということで2000ルピー寄付して参りました.寄付だと固く信じております.

Sulabh International Victoria Memorialではタイムアウトで記念堂には入れませんでしたが,Garden Timeで10ルピー払ってのんびり散歩してきました. 写真好きが多いようで,モデルのように,モノホンかもしれませんが,サリーで綺麗に着飾ったお嬢さんを撮影しているグループがいくつか来ていました. もう一度大学のキャンパスのような所に戻って,学生達の様子を見物していました. そこへ「◯◯先生,お着きです」というメールが.夜はコルカタに滞在しておられる経済学部の◯◯先生と食事をすることになっていたのですが,予定より1時間以上早く到着ということで,コルカタ市内を3kmほど5分半/kmほどのスピードで激走させていただきました. 初めてのベンガル料理は,超高価でしたが美味でした.

Sulabh International 17日は,それぞれの出発便に合わせて日本に向けて出発です. 私とK先生は朝6:30から散歩に出かけ,BBDにある植民地時代のゴチック建築が今も残る州庁舎や裁判所を見物し,8時過ぎにホテルに戻り朝食をとりました. 10時過ぎに貴重な展示品の倉庫のようなIndian Museumを見学し,Food Bazaarで日清カップヌードル,香辛料などを調達し,帰る準備は万端怠りなしです .Park St.のHot Kati RollでEgg & Chicken Roll(写真5)を買って道端で食し,最後にSt. Paul's Cathedralも見て,コルカタの旅は終了です.

今年のIndia Study Tourは,たくさんの人に支えられて実現することができました. 私の友人のSinhaさんには本当にいつもいつもお世話になっています. DISHAのRaviさん,Shobuhanaさん,RameshさんのおかげでJEEViKAの訪問が可能になりました.ありがとうございます. 加藤さん,祐川さんをはじめとするHONDAの皆さんには,ご丁寧な対応を感謝いたします.