慶應義塾大学 商学部・商学研究科

新保一成 研究室

開発と環境の経済分析...

2016 India Study Tour(9/4〜9/11)

今年度のIndia Study Tourは9/4〜9/11に実施しました. 今年で6回目のIndia Study Tourです. 以下,新保のツアー中のFB投稿に加筆して報告します.

9月5日 Sulbah International訪問

Sulabh International Slab Internationalは,マニュアル・スカベンジャーという汲み取り便所の汲み取り作業を生業とする不可触民を, トイレ技術の開発と普及によって解放するNGOです.

朝10:00から始まるお祈りから参加しました. インドの伝統的な歓迎を受け,一人ひとりが名前を呼ばれ,創始者のPathak博士から花輪とストールをかけていただきました. その後,Sulabh School,トイレ博物館の見学,Sulbahトイレ,排泄物の循環システムの説明を受け,最後に円卓でQ & Aセッションが行われました.

Sulabh Internationalへの訪問が,同NGOのFBページに早くも紹介されています. 当日インドはTeacher’s Dayで,生徒たちがサリーで着飾り,先生と生徒の役割を交代して,レクレーションなどを楽しむ日のようです. 不可触民が60%,上位カーストが40%というインドではあり得ない構成のSulabh Schoolでも先生たちが椅子取りゲームを楽しんでいました. 貧しい家庭の女の子は初潮を迎えても生理用品を買うことができず,不衛生な状態に放置されてしまうことが多いそうです. Sulabh Schoolでは生理用ナプキンを生徒たちが自作し,使用後の処理も自分達でします. その工程を生徒たちが説明してくれたのですが,その中に男の子もいたのには驚きでした.

ショッピングモールでランチを食べました. 最近Delhiや近郊のNoidaには巨大なショッピングモールが出現しています. たいていのショッピングモールにはインド料理系の店舗だけではなく, 米国のモールかと思わせるようなBurger King, Subways, Domino's Pizzaなども必ず入っています. もちろんビープやポークは食べられませんけどね. 今回のツアーでは,ランチで非インド系のものも食べることができる場所をできるだけ選んでいます.

午後には,学生はDelhi観光へ. ランチを終えた時点で3時を過ぎていたので,Qutb Minarだけの見学になりました. 小生は,Indian Coucil of Research on International Relations(ICRIE)に研究の打ち合わせに行きました. ここは小生が2008年9月から1年半通い続けたIndia Habitat Centerの中にあります. 農村地域を太陽光を中心とした再生可能エネルギーで電化することを政府が計画していますが, 太陽光パネルを国産するのか輸入するのかがインド国内で問題になっているそうです. それに関するいくつかのシナリオ分析をしたいので協力してほしいとのことでした. もちろんOKです.

9月6日 学校訪問 & Slum Walk

昨年,一昨年に続き, SWYAA India(The Ship for World Youth Alumni Association)の Mr. Ravi ChopraさんとMs. Shobhana Radhakrishunaさんに現地の小学校とDISHAのOpen Schoolを紹介していただき, 日本の文化紹介などを通じて生徒たちと交流しました.

cleaning New Delhi西部のNaraniya villageにある公立初等学校を訪問. 学生は3人づつ4グループに分かれ,3学年,4学年の生徒に折り紙を手ほどきし,日本の小中学校における清掃活動を紹介しました. 午前は女子,午後が男子というシフト制なので,対象は女子児童だけです. 正方形の折り紙をきちんと対称に三角形に折ることがなかなかできないようです.特に,折り鶴を教えたグループは悪戦苦闘していました. 日本語の数字の数え方も教えました.こちらはなかなか覚えがよいようです. 逆に日本の大学生はヒンディー語の数えを全然覚えられないという有様です. 日本の小中学生は毎日朝の授業前,放課後に教室やトイレなどを自分達で掃除していることをShobhanaさんに説明してもらうと, インドの学校では生徒が教室などを掃除することがありませんから,大変驚いた様子でした. 日本から持参した雑巾で床掃除をして見せて,生徒たちにもやってもらいました. どうみても四つん這いの徒競走としか思っていないようで,キャッキャッと楽しそうにしているので,われわれもと手を挙げる生徒がたくさんでした. われわれにもそのような遊びの部分はあったわけで,それがきっかけで掃除をするということを覚えてくれればよいのですが, 学校の課外活動として掃除を根付かせることは大変困難だと思われます. 家庭によっては,自分で掃除するなんてもってのほかなわけですから.

近くのMcDonals'sでランチをすませ(ちょっとハプニングがありましたが), Delhi Cantt駅近くのMayapuri Industrial Area Phase IIの線路沿いに広がるスラムを DISHAのMr. Ramesh Kumarさんといっしょに少し歩き,DISHAが運営するOpen Schoolに向かいました. Open Schoolでは,スラムで暮らし学校へ通えない子供たちに学校に戻れるように教育をしています. 学生たちは,こども達のお絵かきの手助けをしました.お絵かきの内容は,日本のキャラクターや学生たちの顔です.

DISHA ほど近くのNangal Rayaの職業訓練学校に向かい,そこの生徒たちを交流しました. まずはお互いに歌の披露.インドからは伝統的な歌を2曲.日本からは『世界に一つだけの花』. 次は踊り.インドからは伝統的インド舞踊,日本からは即興で羽山の阿波踊り,野原 & ダンサー白木のよさこい節. なんと次は日印対抗腕相撲大会.日本の圧勝でしたが,日本の方が栄養状態がよいということでしょう. 最後に質問の交換をしましたが,野原の"What is your dream?"というありがちな質問に,「先生」と答える少女がかなりいました. 自分達がまともに受けることができなかった教育を勉強して先生になることによって,自分達と同じような境遇にあわせたくないという思いがあるようです.

夜行寝台電車でJodhpurへ移動

DISHAの職業訓練学校からDelhi Gate近くのHotel Broadwayのレスランに直行して夕食. ここはかなりシックなレストランで味も上品. 夕食を終えて,そのまま鉄道New Delhi駅へ. 今年のStudy Tourの目玉であるRajasthan州Jodhpurに向かいます. New Delhiを夜行寝台特急Mandor Express(列車番号14661)で21:45に出発して,翌朝の7:50にJodhpurに到着予定のおよそ10時間の長旅です. 日本では寝台列車はすっかりなくなってしまいましたが,インドではまだまだ現役です. ですが,全くプライバシーのない,誰の目にも曝され,誰からも手が届く寝台では様々な手段の盗難事故が報告されているので, 学生には十分注意を喚起しておきました. それでも学生たちはよく眠れた様子で,何事も無くJodhpurに到着しました. Jodhpur駅では,現地旅行会社Exclusive IndiaのマネージャーMr. Nibhay Singhさんが出迎えてくれ, 2台の車でHotel Amargarh Resortに到着. 通常は12:00チェックインですが,部屋はすべて準備済みで,朝食を済ませて次のプログラムに備えました.

9月7日 GRAVISプロジェクト サイト訪問

mines Rajasthan州のタール砂漠(Thar Desert)で活動するNGO GRAVISにその活動を見せていただきました. GRAVISのSenior Program CoordinatorのMr. Rajendra Kumarさんと10:00前にホテルで落ち合い, 最初に,Jodhpurから北へ45km,車で30分ほどのTiwari村へ向かい, 砂漠地域の唯一の産業である砂岩採掘場と労働者の家を訪問しました. 採掘時の粉塵が原因の肺疾患で亡くなる労働者が後を絶たないそうです. 訪問した家庭の稼ぎ手であるご主人も数日前に肺疾患で亡くなったそうです. 事業主は何の対策も施さないので(安価な代わりの労働者がたくさんいるからでしょう,いわゆる無制限労働供給の状態です), GRAVISがマスクやヘルメットの提供をしているそうです. でも砂漠という酷暑での労働条件,健康である間は将来のリスクに無頓着なのでマスクをする労働者はほとんどいないそうです.

ちょっとでも収入が欲しいので女性,子供も小石拾いなどに駆り出されます.さらに女性は砂漠での水汲み,炊事用の薪集め, 家事で1日のほとんどの時間を費やします. 子供達は正規の学校へ通う機会を奪われるので,1年生から5年生が対象のGRAVIS Schoolで仕事の合間に授業を受けます. 科目は若い女性の先生に任されています. 彼女は,ヒンディー語,英語,算数,お絵描きに加えて「環境」という科目を教えているそうです. 「環境」の授業では,水の大切さはもちろん「気づくこと(awareness)」の大切さを強調しているそうです. Awarenessの大切さはインドで生活していると痛感します. たとえば,マスクを使うことで肺疾患を予防できることに気づく, 野外排泄(open defecation)が雨水を貯水して飲料水としても使うシステムにどのような影響を与えるかに気づく, 女性に自由を与えることが長い目でみれば所得の増加につながることに気づくなどです. 気づいたら,次は実行することですね.

さらに車を30分ほど走らせてGRAVIS Hospitalへ. 開発途上国の農村地域に暮らす人々にとって,高度な医療サービスにアクセスするのは非常に困難です. GRAVIS Hospitalは,2000年に様々な機関の援助を得てこの砂漠地帯に建設されました.協力した機関の一つが日本大使館です. 日本のスタンダードと比べれば何とも頼りないと感じたかもしれませんが,4人の常勤医師と1人の外来医師が, 十分に医療費を支払うことができる裕福な人には有償で, 医療費を全く支払うことができない貧しい人たちには無償で,地域一帯に暮らすおよそ20万人に対して様々な医療サービスを供給しています. 手術を含む眼科,マラリアや結核(tuberculosis, TB)などの感染症の処置,栄養失調や貧血(anemia)への対処, 妊婦の健康管理と分娩などが主なサービスです.

4人の常勤医師のうち1名が忙しいにもかかわらず,われわれを案内してくれました. 妊産婦を診ていた若い女性医師は, 「あなたたちは医学部の学生ですか? そうでなくても, 先進国に比べると私たちにはまだまだ足りないところがあるので何かアドバイスしてくれるとありがたい,」と投げかけました. GRAVIS Hospitalに設立に寄与してくれた日本人の訪問ということもあり業務中の時間を割いて丁重に扱っていただいているにもかかわらず, こちらの準備不足,覚悟不足は否めませんでした.

一通りの説明をしていただいて,外に出てチャイをいただきました. われわれを案内してくれた医師は,飲み終えたカップをポイ. われわれがめいめいのカップを集めているとRajendraさんが「ゴミ箱はここだよ」と教えてくれました. これが「気づき」です.わたしがインドに滞在していた2008年ごろは,道端の屋台で売られているスナック類は葉っぱの皿, チャイやラッシーは素焼きのコップで提供されていました.食後,飲後はポイ. でも葉っぱや素焼きのコップは,やがて土に戻るので,環境への負荷は極めて小さかったはずです. 人間は自らの寿命を延ばしてきたのと同様に,永久に使える素材であるプラスチックやビニールを開発してきました. プラスチックやビニールをポイすれば,これらは土に戻ることがなく,廃棄物となって永久に環境に負荷を与え続けます. したがって,使用済みのものを回収して,リサイクル,リユースが必要になります. つまり,環境への影響,リサイクル・リユースの経済的効率性に「気づいて」,われわれの生活様式を変えていく必要があります. インドの街並みを見れば,いたるところに使用済みのプラスチックやビニールが山積みになっているのを見かけます. それらは日に日に大きくなっていくだけです.産業および一般廃棄物を処理する仕組みも施設もほとんどありません. インドでは富裕層,高学歴層が不浄のものを処理する直接の当事者にならないために「気付かず」,仕組みの導入が進まないと言われています. ポイ捨てばかりでなく,選択的中絶,私立学校の偏重なども同じです.

まさに砂漠のど真ん中に位置するJelu-Gagadi村に位置するGRAVISが創設された事務所に向かい,そこでランチをご馳走になりました. Rajendraさんは,ここではガンジー主義的に食事を取ると告げ,食事のサーブが始まりました. その意味は,(1)床に座ってみんなで一緒に食事をする.(2)食事の後は,自分が汚した食器を自分で洗う,(3)菜食主義. カースト制のもとでは,カーストを超えて食,水,婚姻を共にできないし,食事の残り物の処理や食器洗いは不可触民がすべき不浄な仕事です. ガンジーは4つのヴァルナ(バラモン,クシャトリア,ヴァイシャ,シュードラ)については宗教的な意味で擁護,称賛しましたが, ヴァルナ間に上下はなく平等なものだとし, ヴァルナをさらに細分化したいわゆるカースト制度あるいはジャーティは宗教的な意味は無いとして反対の立場でした. またガンジーは不可触民をハリジャン(神の子)とも呼びました(これを偽善とする人も多い). すなわち(1)と(2)はガンジーの平等主義の実践というわけで,そしてメニューはイエローダール,ミックスベジ,チャパティ,パパド, チャウラというベジタリ―でした.

食後は,GRAVISによる2種類の貯水技術を見せていただきました. タール砂漠では,雨季の間に降る雨をいかに貯めるかが生活に大きく影響します. 最初に見せていただいたのははtaankaという主に家庭向けの貯水槽で,雨水を貯水槽に導く誘導路をジグザグにしたり,近辺を引っかかりの多い草木で覆い, さらに貯水槽の内部にネットを張るなどして異物に汚染されないような工夫をしています. Taankaに貯められた水は飲用も含めて家庭内のあらゆる用途に使われます. もうひとつはnaadiという共同溜池です.Naadiでも上手に傾斜を利用して溜池に水が貯まるように導いて, さらに溢れた水がより下方の溜池に誘導されるようにしています. Naadiは主に動物のための溜池だそうですが,人の飲料用にも使われるそうです. Naadiにとっての最大の汚染源は人間の野外排泄で,水の経路上での野外排泄の現場を抑えられたら, コミュニティの開発委員会によって何らかの罰が課されるそうです. さらに経路上での野外排泄が繰り返し目撃された場合には村八分となり, コミュニティに属するおよそ80世帯に食事を振る舞わなければ村八分状態を脱出できないそうです. 村八分になることはタール砂漠において共同溜池が使えないことを意味し,復帰するために莫大な経済的負担を強いられますから, 経路上での野外排泄をするものはなく,溜池の水は清潔に保たれているそうです.

この地域では飲料水として雨水を使い,地下水は決して使わないそうです. 2001年の調査でインドの34889村のうち18009村の地下水がフッ素(fluride)に汚染されていることがわかったそうです. 日本でもフッ素は歯のエナメル質を保護するために使われていますが, フッ素が飲料水に高濃度に含まれている場合には骨フッ素症による関節と骨の硬化,石灰化などの深刻な骨の病気にかかることがわかっています.

これまでStudy Tourで訪れた村々では,質的な問題は別として水が量的にかつ恒久的に不足しているという問題はありませんでした. それでも女性は,薪,牛糞などの燃料の収集と家事に1日8時間ほどを費やさなければなりません. そこでは牛糞から発生するメタンガスを調理用に利用するバイオガス・システムを導入することで, 洗濯機や炊飯器が女性に自由な時間を生み出した以上の時間を作り出すと言われています. それが女性のエンパワーメントにつながります. ここタール砂漠では,燃料に加えて水の利用可能性も高めないと女性のエンパワーメントにはつながりません. 伝統的な水貯蔵システムに科学的な知見を加えたtaanka,naadiなどの技術を普及させて,共同体, そして特に女性のエンパワーメントを図るのがGRAVISの仕事です.

9月8日 GRAVIS Jodhpur事務所訪問,Jodhpur観光

午前中はGRAVISのJodhpur事務所で,プレゼンを受けました. 事務所について車を降りようとしてまず驚いたのは,「牛の糞で足の踏み場がない!」ことでした. いろいろな所を歩きましたけど,これだけの凄まじいのは初めてです. プレゼンの内容はGRAVISのWebサイトのものと重複しますので, そちらをご覧いただければと思います. 学生からも数多くの質問が出て(少々裏がありますが),実り多いミーティングだったと思います. 昨日ランチをご馳走になったこともあり,貴重な時間をわれわれのために1日半も割いていただいたので, 学生1人あたり500ルピー(=6000ルピー)+2000ルピー=8000ルピーを一般目的の寄付として受け取っていただきました. 事務所を出てまたビックリ.「ここは牧場か!」牛だらけ・・・

ランチは運転手さんの紹介で「On The Rock」という旅行者に人気のレストランに連れて行ってもらいました. インド料理も美味で,イタリアン,洋風ケーキも美味しかったようで,少々インド料理に食傷気味の学生たちにもよかったようです.

bluecity ランチの後は,Meherangarh Fortを観光しました.カメラ持ち込み料を含めて600ルピーとお高めでしたが,十分元を取れるサイトです. Jodhpurは別名「ブルーシティ」と言います. 家屋の壁面に塗布した防虫効果ある漂白剤が青く変色したそうです. 写真はMeherangarh Fortのチャームンディ・デーヴィー寺院を囲む城壁から眺めたJodhpur市街です. まさに「ブルーシティは青かった」です.



なんとかジャイプール着

23:15ジョドプル発の夜行寝台14660でJaipurへ向かう.Jaipurへは翌朝4:50到着予定です. Jodhpur駅に車で向かう途中の道中,路端が多くの人々の寝床と化しているのを観て,驚愕した学生は多かったのではないでしょうか. ただ,車に乗った途端に爆睡できる技を持った学生がほとんどだったので観ていないかもしれませんが・・・ 駅についた時点で出発まで1時間ちょっとあり,2番線ホームには14662が出発を待っていました. 14662の出発後に14660が入線して来るだろうと想像するのは普通でしょう. 待てども待てども14662は出発しません.そのうちに時間変更の案内が掲示板に流れます. 14662,14660ともに23:30に2番線から出発に変更.「どういうこと???」 何かの間違いだろうと,掲示板に目を凝らし,構内アナウンスに聞き耳を立てましたが,修正される気配はありません. 14662に14660がのかっるか?

そこへさっきまでお世話になった運転手UmeshとExclusive IndiaのNinbhayが「ちゃんと乗れたか見に来たんだけど,どうした?」 事情を説明すると「後から来る14660が14662に連結するんだ.心配ないよ」 のっかるんじゃなくて,くっつっくんだ.なるほど. Now all clear! これもThis is Indiaの一つだな.

結局,45分ほど遅れて14660が入線して連結. 車両番号と座席番号は出発予定時刻に4時間前にWebで発表になるそうで,それをあらかじめセナさんからLineしてもらっていました. 各車両には乗客リストが張り出されるのですが,そこに名前なし!? セナさんに電話するも「えーそんなはずないよ.座席が空いているか確かめてみて」 座席は空いていました.またもやUmeshが,チケット代わりの予約リストを小生から受け取って,確認に行ってくれました. 「大丈夫だ.ちゃんとConfirmされている」 なんとか出発できました.Umeshと Ninbhayは「お客様第一だからね」と"This is not India"のような一言. 本当に感謝感激雨霰です. 名前がリストになかったのは始発のJaisamer駅で乗り込むお客の名前だけが載っているようです.

次の問題は,Jaipurが終点ではないこと. 早朝5時前到着なので寝過ごしたらえらいことです. 車内放送がないので停車した駅で何処か確かめるしかありません. 学生に4:30にアラームをセットするように指示して就寝. 3段ベッドなのでほぼ身動き取れません. アラームで目を覚まし,まだかなりのスピードで走っていたので,トイレに直行. 用を足している間に電車がストップ.途中で止めるわけにもいかんので,完ケツ. トイレを出て,「ジャイプルか?」と聞いてみたら,間もなくという返事. 再び列車が動き出し,ほどなく到着. 学生も全員起きていて,無事とうちゃこ. ホームにはデリーから来た運転手Sanjeevが出迎えてくれて一安心. 着いたホテルはゴージャスで,ぶっくり! ここでも到着を待ち構えていてくれて,チュックイン時間前にもかかわらず部屋が準備されていました.

9月9日 HEDCON訪問とJaipur観光,買い物

夜行寝台で朝5時にジャイプールに着いて,少々寝たいところではありますが,朝食を済ませて9:00にホテルを出発. 12:00にNGO HEDCON(Health Environment and Development Consultantium)とアポがあるので, 午前中は旧市街に行って風の宮殿(Hawa Mahal)を観光することに決めました. HEDCONとのアポは,GRAVISのRajendraさんが取ってくれました. GRAVISのWebにはJaipurにも事務所があると書いてあるので,てっきりGRAVISの支部だと思っていたら, HEDCONはGRAVISと関連のある別団体ということでした.

HEDONでは,Mr. Mahitosh Bagoriaさんがその活動を熱く語ってくれました. 若い職員が多く,小さいながらも活気あるNGOという感じを受けました.

砂岩に限らず鉱山事業主は権力を笠に来た政治家などの有力者が多く,自らギャングを雇い, 労働争議などあろうものなら殺さんばかりの勢いで潰しにかかるそうです. ほとんどが指定カーストまたは指定部族で,他に雇用機会のない労働者は失業することを怖れて声を上げられないのが実態だそうです. まさに交渉上の地歩の違いが「市場メカニズムを機能させる余地のない」実例がここにあると感じた学生も多かっただろうと思います. 鉱山労働者の子弟の中には,職業訓練を通じて携帯電話修理などの技術を身につけた若者もいます. 携帯電話修理の仕事は,1日に300〜500ルピー稼げるそうですが,毎日仕事があるとは限りません. 鉱山労働の場合,熟練労働で年5000〜7000ルピー,未熟練労働で年3000〜5000ルピーだそうです. 携帯電話修理の仕事が年に2週間あれば鉱山での熟練労働に相当するわけですが, 収入に関しては安定的な鉱山労働の代わりに,いつ収入が入るかわからない不安定な携帯電話修理を選ぶというよりは, それは副収入を得る手段に留まっているそうです. ちなみに未熟練労働の賃金の幅ですが,3000ルピーは女性労働者の賃金だとはっきり言っていました.

Mahitoshさんは,われわれも簡単にプロジェクトに参加できる例として, 不要になった子供服をHEDCONに送ることによって鉱山労働者家計の生活をちょっとでも楽にできるということを教えてくれました. Mahitoshさんの提案に学生たちがどう応えるか期待したいと思います. さらに,本当は2〜3週間農村に滞在してプロジェクトのタスクに参加して欲しいというとです. このStudy Tourでそれに応えるのは難しいけど,夏休みや春休みをそのようなインターンシップに使う学生が出てきたらいいと思います. 来年に向けてStudy Tourでも3日程度農村に滞在して活動ができないかMahitoshさんと相談してみようと思います.

ランチが終わった時点で4時近くになっていたので,買い物に時間を充てました. Rajasthan州は,織物,宝石,Blue Pottery,細密画などが有名です.明日から女性陣はインド服で登場のようです.

9月10日 JaipurからAgraへ

最後の2日間は観光です.

elephant1 elephant2
elephant3 elephant4
elephant5

7:30にホテルを出発してまずはAmber Fortへ. Amberは,Amber王国が18世紀初めに首都をJaipurに遷都するまでの首都でした. Amber Fortを含めたこの辺り一帯の城塞が世界遺産に登録されています. 学生たちは,Amber Fortまで6匹の象に分乗しての登城で大満足の様子でした. その後,勝手に撮られた写真を買う買わないの攻防は面白かったですが,売りつける方はプリントまでしてコストをかけてしまっているのですから, それに被写体以外の顧客が買うわけないですから, バカみたいな値段をふっかけたり,大量に買わせようとして客に大いに不快な思いをさせた挙句に客を逃すよりも, フェアな利益が上げられる売り方を考えた方がいいんじゃないですかね. 結局1枚も買わない客もいるわけで,そうなってから泣きついてくるのはわけがわかりません. ちなみに象1匹のレンタル料は1100ルピーで,象1匹に2人まで乗象できます.

象で登らない場合には,1人あたり200ルピーほど払ってジープで登城します. わたしも経験がありますが,ジープの乗り心地はひどいものです. 象道にほぼ平行して象道と2回交差する歩道があることを運転手のSanjeevから教えてもらったので,そこを歩き交差点で象に乗る学生たちの写真を撮りました. えらく近道で,ジープに乗る必要など全くありません.これまでぼったくられていたということですね. 小生の方は,出だしから細密画を売る兄さんにつき纏われ,10枚で100でどうだとしつこくせがまれます. 「100ルピーか」「No. 100ドルだ」「いらねー」「90でどうだ」・・・ 坂道を駆け上ってみると彼は全然ついてくることが出来ません,しかし交差点で学生が乗った象を待っていると息ゼイゼイの体で追いつかれます. 「年取ってるように見えるけど速いな・・・」 挙げ句の果てにヤツは10枚の絵を丸めて小生のポケットに突っ込む始末.これでもう一度駆け上がったら泥棒になっちゃいますから, 仕方ないので1枚だけ気に入ったものを300ルピーで買いました. Jaipurに来るたびに細密画は買っているのですが,こんなに慌てて選んだのは初めてです. 降りて来たときにも待ち構えていて,「学生さんに言ってくれよ」と言うので「おまえのビジネスだろ.自分でやんな」と返事しておきました.

chand baori Amber Fortを出発してUttar Pradesh州のAgraに向かう. 途中Jaipurから100kmほどの所にあるChand Baoriに寄りました. これは1世紀前に建造された世界最大の階段式井戸です. このような構造であれば,どのような水位でも水汲みできます. 水に貧しいRajasthanでは,水を確保するために遠い昔から様々な工夫が施されてきたのですね. 5:30過ぎにAgra着.




9月11日 Agra観光

学生たちにとっては初めてのTaj Mahal.大感激の様子でした. 小生にとっては,そろそろ両手でも足りなくなりそうですが,いつ来ても壮大で対称な美しいその姿には圧倒されます.

Agra Fort Agra Fortでは少々珍事. Agra観光では遺跡に入場するまでにガイドの押し売りを追っ払うのが一仕事で,毎度辟易します. やっとこさ13人分の入場券を買って,切符を切ってもらおうとした瞬間,いかにもという感じのインド人の若者が入場券を小生から奪い取って代行. そして曰く「ガイドを無料でやるから,帰りにおまえたちのチケットちょうだい」 最初は何のことやらわからず,またもや厄介なヤツが現れたなと思い,なんとか振り払おうとしました. しかしよく考えてみると,こいつの戦略はこうです. Agra Fortへは,1枚のチケットで同日であれば何度も入場できます. そこで,われわれのように朝イチで来たお客から使用済みの入場券を頂戴して,次に来る客に少々安く売りつけようという魂胆だ. おそらく切符切りとも連んでいますから,旅行者にも少々お得で,ヤツらはがっぽり儲かるという仕組みです. さらにぼったくりのガイドを追い払うのに皆さん疲れていますから,まぁいいやという気になってしまいます. システムの穴を突いた新手の商売です. こっちも疲れていたので話に乗ってしまいました.

ガイドもそこそこできて,日本にも来たことがあるというので,結局小生と二人でずっと喋っていて, 学生はと言えばホトジェニックに夢中でやっぱりガイドは必要なかったようです. 息子に幽閉されたシャージャハーンが王妃ムムターズを偲んでTaj Mahalを眺めたその景色が有名なAgra Fortです. でもTaj Mahalはちっちゃくにしか見えません. しかし,遠く離れて眺めると目の錯覚でかなり大きく見える所があります. これが悪徳ガイドから得た唯一の収穫. 来年から使わせていただきます.カメラは錯覚しないので,写真でお見せすることはできません.あしからず.

ホテルに戻ってランチを取りDelhiへ.Delhiに戻ったところでIndia Study Tourは終了です. 小生はDelhiに入ったところでSinhaさんに拾ってもらい空港へ直行です. 学生たちは韓国経由で帰るグループ,さらにインド旅行をするグループと帰路は様々です.

今年もSinhaさん,Raviさん,Shobuhanaさん,Rajendraさん,Mahitoshさんなどたくさん人にお世話になりました. 本当にありがとうございました. またJaipurから最後までを担当してくれたブラビ似の運転手Sanjeevは,英語が達者で,話題豊富だったので, 長い道中退屈せずに過ごせました.来年も彼に当たると嬉しいです.