慶應義塾大学 商学部・商学研究科

新保一成 研究室

開発と環境の経済分析...

エネルギー・環境政策と燃料間需要弾性: インドの標本調査による実証分析

Fuel demand elasticities for energy and environmental policies: Indian sample survey evidence

Haripriya Gundimeda and Gunnar Köhlin, "Fuel demand elasticities for energy and environmental policies: Indian sample survey evidence," Energy Economics, vol. 30, no. 2, pp. 517-546, 2008.

2段階予算制約モデル

家計は、第1段階でその予算を燃料と燃料以外の財サービスに配分し、第2段階で燃料の配分された予算を4種類の燃料に配分する (ここで、4種類の燃料とは薪、灯油、電力、LPG)。

推定方法

第2段階の予算配分では、4種類の燃料のうちのいくつかを消費していない家計が多くある。 サーベイで観察される消費量ゼロという情報は、家計の選好に従ってその燃料を全く購入する気がないのか、 調査期間にたまたま購入しなかったかを識別するにはを不十分である。 購入量が非ゼロのデータだけを分析対象にしてしまうと、もし購入家計と非購入家計が全く異なる選好を有していれば、 サンプル・セレクション・バイアスの原因になる。

そこでヘックマンの2段階推定法でセレクション・バイアスの修正を施す。 つまり、買うかどうかどれだけ買うかの2種類の意思決定を別々に推定する。 最初に、家計が特定の燃料を購入する確率を全てのデータを使ってプロビットで推定する。 次に、推定された確率を使って逆ミルズ比を計算し、セレクション・バイアスによる内生性を除去するための操作変数として需要関数に加えられる。 これらの需要関数群を見かけ上無関係な回帰(SUR)で、方程式間係数制約、加法を課して推定する。 シェア関数を足し合わせれば1になることから需要関数体系の共分散行列は特異行列になるが、 任意の1本のシェア関数を落とすことによってこれに対処することができる。 また、どのシェア関数を落とすかはパラメタの推定値に影響がないことがわかっている。 この論文では、電力のシェア関数を除いて推定する。