思考、変化、創造

ロバート・I・トービン、商学部助教授

 

今日の激変する経済・社会環境の中では、状況を大局的に把握する能力、そして創造性が何よりも求められます。そこで私は授業の中で、学生の思考能力と創造性を養うことを意図し、今日の世界で起きている変化が私たち自身にとって何を意味するのかを論じ合いました。また海外在住経験者が多数参加していた授業では、世界各国の人々の異文化体験を記した資料を題材に、他国民の物の考え方を知り、自分自身が海外で暮らしたことの意味、さらには文化が交わることで生まれる新たなチャンス、スナジー効果などについて学生に考察してもらいました。

海外に暮らすことで体験する異文化との接触や様々な変化は、創造性を養う上で大きな意義を持ちます。私は、授業という形式の中でも、学生に変化を体験し、創造性を培ってもらうことを期待しました。グループディスカッションなどを積極的に取り入れた授業の中で、学生たちは自らの考えや意見を述べると同時に、他人の意見にも積極的に耳を傾けるよう促され、他者、そして自らに対する理解を深めたのではないかと思います。また三田、日吉キャンパスでの今年度の授業で、私は学生主導のグループ活動を実験的に取り入れてみました。学生に議題の選択やディスカッションの進行役などを任せることで、リーダーシップを取るための技術、コミュニケーション技術を磨くことを意図しました。

19974月からは、現在の日本で起こっている様々な変化を扱う新しい講座が開講します。この「変化と創造性」と題されたコースは、日吉キャンパスでの総合教育科目に含まれ、全学生が受講できます。この授業では、学生がその個々の人生や職業生活、さらには組織の中で変化と創造性をどのように活かすことができるかを学ぶ手助けをします。インターネットに対する関心が高まっている昨今ですが、私は、人と人と直に接することの方がより重要であり、難しいのではないかと思います。他人と関わることは、自らと関わることでもあり、それは自分自身の目標や興味、才能などをよりよく理解することに繋がります。そして、そうすることで我々は変化への対応力を高め、自らの中にある創造性を開発することができるのです。

 

〈教員プロフィール〉 ボストン生まれ。1968年マサチューセッツ大学経営学部卒業。83ボストン大学で教育学博士号取得。研究・著作の主要テーマは組織変化。ボストンで経営コンサルタント、ABCテレビのコメンテーターを務める他、米国内や、韓国、フィリピンなどでも教職経験を有する。92年本塾大学非常勤講師、96年商学部助教授に就任。