Taj 多事
Taj 多事
2009
62年前の1947年8月15日,インドは大英帝国からの独立を果たした.パキスタンとの分離独立は現在でも禍根を残しているが,インド人にとっては自由を獲得した祝すべき日である.その2年前,日本は多くの人的,物的資源を失った末に太平洋戦争を終戦した.特に終戦までの10日間に起きた悲惨な出来事を人類は忘れるべきではない.インド人にとっても独立運動の中で失われた命の数を忘れるべきではないし,独立したときのインドが目指したものを確認するべき日でもあるだろう.朝7時のニュースでは,62年前のネルー首相の演説が真っ先に放送された.日本人としては,インドの「Happy Independence Day」という熱狂の中にいることにとまどいを感じないではないが,今日はTERIで行われる祝事に参加することにする.
朝7時45分頃からマモンハン・シン首相の演説がラルー・キラーで始まった.残念ながらヒンズー語.あとで聞いたところでは,「インドから空腹を追放する」などに代表されるような農民向けのメッセージが多分に含まれていたようで,英語を理解できない人達への配慮があったようだ.といっても,インドにはお札に書かれているだけでも13,14の言語があるから,それぞれに通訳するのは大変なことだろう.
首相の演説は途中であるが8時を過ぎた所で家を出る.リキシャの溜まりにはいつものメンバーは一人もいなかったが,共和国記念日にえらく遠回りをした末にIHCまで連れて行ってくれた運転手がいた(あの日は,LABLのメンバーとラジャスタンへ行くために何としてもIHCに行かねばならなかった).なんという巡り合わせか.
ところがヤムナ河を渡った後,インド門へ向かう道がどの道も閉鎖状態.運転手は直に解放されるという情報を掴んでいたのだろう,警官がバリケードを張っている真ん前で待機を決め込む.待機の車,バイク,リキシャ,歩行者の数はみるみる増えていく.新参者は一様にまず警官に一言言いに行くが,不平顔で待機する.そのうちに雨が降ってきて傘を持たない人は,これが普通なのであるが,ずぶ濡れである.
そのうちサイレンの音けたたましく,数台の警察車両に囲まれた一台のTATA アンバサダーが目の前の大通りを通過して行く.おそらくラルー・キラーで演説を終えた首相の車だ.時間は8時半.8時半を持ってすべての道路が開放されたようだ.TERIの祝事は9時開始であるが,8時50分に何とか到着.
この日は家族同伴が原則らしく,式の行われるTERIの入口近辺は人でごった返してる.なかなか知った顔が見つからなかったが,アトゥールが現れて,小生にもインド国旗のバッジを調達してくれた.式は,パチャウリ所長の「誓い」に始まり,国旗の掲揚と国家の斉唱の後に,ホールに移動して,再び所長の挨拶と催し物という次第で進行した.「誓い」は,以前所員に提出させたものと同じで,「自分の持てる能力と資源をTERIの活動に捧げ,全ての仕事を決められた納期までに仕上げます」,というものだ.さらに挨拶では,「今がTERIを世界に知らしめるチャンスであり,TERIがインドばかりでなく世界を変えるチャンスである.そのためにWork harder!」というわけである.後発の利益を活かして,持続的発展の一つの形を示すことはインドに与えられた役割だと思うし,それをどのように実現するのかを理論と実績に基づいて設計する役割をTERIが中心になって荷なっていければよいと思う.そのためのWork harderというのは,ただ労働時間が増えるということと同義ではない.明らかにWorkの質が問われている.パチャウリ氏にとっては当たり前のことだと思うが,それがどのくらい所員に伝わっているのだろうか.そしてこの祝事に参加した家族の人達には,どのように聞こえたのだろうか.
パチャウリ氏も言っていたが,TERIは上(政府,国際機関,海外の大学や研究機関など)にも下(農村)にも根を広げている.それにはDSDS(Delhi Sustainable Development Summit)やLaBL(Lighting a Billion Lives)などといった活動が,TERIの知名度を上げるのに大いに貢献している.これらの活動が,経験に基づく理論によって裏付けられることが必要である.そのことが,他の研究機関との違いをさらに際立たせるにちがいない.日本の特に政府系の研究機関を見ていると新しい理論の追っかけに必死で,それらの研究成果に基づいて,いったい何が成されたのかというと何にもないに等しいのではないだろうか.慶應が未来開拓事業で行ったバイオブリケットの導入事業は,まさに理論的解析と実装の両者を目指したものであった.結果として,大成功というわけにはいかなかった.それには,様々な問題があるであろうが,今になって感じるのは,研究者のそれぞれが,そういう気持ちではなかったということではないかと思う.パチャウリ氏の言動は,時に独裁的に見える.しかし,大きな事を成し遂げるために,ある程度は必要な悪なのかもしれない.あとは所員がそれをどう受け止めるかだ.そして,彼がやろうとしていることはインドだから意味があるのだと思う.小生は,研究という視点からTERIの活動に興味を持った.小生の分析ツールがTERIの活動の裏付けになるように「Work harder」というところだろうか.
催し物は,TERI Music Clubの歌,TERI大学の学生による歌と寸劇,家族の子供たちによる歌と踊り.TERI Music Clubの演奏はなかなかのもので,ジャネイルがインドの伝統的な太鼓と歌で参加していた.子供たちの出し物については,子供たち以上に親に力が入っているのは,どこの国でも同じようだ.その後,外でゲームによる研究チーム対抗戦が予定されていたが,雨で中止.そのままランチに突入して,お開きとなった.ランチの途中で少しばかりパチャウリ氏と話しをしたが,とにかく忙しそうである.
そのまま5時まで仕事をして,いつものようにMandi Houseまで歩く.途中のインド門は,いつもの以上の人手で,それぞれに独立記念日を楽しんでいるようであった.雨のおかげで気温が上がらなかったので,歩いてもさほど汗をかかない.天気予報では,これから数日の最高気温は30℃程度と予想されている.いよいよ遅ればせながらの雨季突入か?
8/15のデリー天気予報 最高気温32℃、最低気温26℃、雨
8/15のデリーの天気 最高気温33℃、最低気温27℃、平均気温30℃
8/15の東京の天気 最高気温29℃、最低気温25℃、平均気温27℃
独立記念日
09/08/15