Taj 多事
Taj 多事
2009
昨日ホテルに戻るとU先生のもとにAvedøre power plantとという風力と石炭火力を合わせ持つデンマーク特有の発電所の見学ツアーとデンマーク工科大学(DTU)からの返事が届いていた。昨晩ホテルで夕食をしたときの時点では,9時半から発電所を見学し,その後DTUに行くことを計画していた。しかし,今朝発電所に確認を取ると天候不順で船が出せないということで断念せざるを得なくなってしまった。
あらためてU先生がDTUに連絡を取り直し,10時から時間を割いてもらうことになった。エストーという毎日利用している電車でLingbyという街へ向かい,そこから300Sというバスで10分ほどで広大なDTUに着く。東大や北大とどちらが広いだろうか。バスが通る中央の通りの両側に校舎が余裕をもって配置されていて,ここ数日の雪で白銀の世界はどこまで続いているのかその境目は見えない。校舎の入り口までは,バスで一緒だった学生が案内してくれ,校舎に入ってからは別の学生(スタッフかも)がHansen教授の部屋まで案内してくれた。もう一人のHansen教授を含めて2人のHansen教授からデンマークの風力発電やエネルギー事情についての話を伺った。矢上のU先生は,慶應義塾先端科学技術研究センター(KLL)の所長で,DTUへの訪問はその宣伝活動も兼ねていたようだ。
DTUは2002年から風力発電専門の修士課程を設置して,毎年30名の学生が入学し,博士課程へ進むものを除いて全員が産業界で活躍しているそうだ。つまり,風力発電が 20%をしめる背後には,その計画,設計,運営を支える人的資本が存在するということである。さらに,EUでは電力市場が国間で完全に自由化されている。つまり各国の比較優位を活かした発電による電力を送電網によって融通するという,国際経済学のヘクシャー・オーリン理論そのものような交易を実施しているのである。送電網による電力の使用が不利なEU域内の島などには,デンマークの風力発電技術が幅広く適用され,その各所各所にDTUで育った技術者が配置されていくということだ。デンマーク自体は2050年までに風力発電の割合を40%にする計画が進行中だそうで,ますますDTUの役割が必要になる。
特に途上国の電力供給には,風力や太陽光を活かした再生可能エネルギーの適用を推奨する議論が多いのだが,教育という人的インフラがなければ,それを適切に運用していくことは難しいのだ。やはり,途上国におけるエネルギー・環境の問題は,教育や地域雇用の創出による貧困の解消を無視しては成り立たない。多面的なアプローチが必要なのだ。
コペンハーゲン中央駅からLingbyにエストーで向かう途中のNordhavnという駅でウインド・パークの風車が並んでいるのが見えたので,帰りはNordhavnで下車して海岸目指して歩いて見た。ひどい寒さの中,海岸までは思いのほか遠く,どういうわけか風車はぜんぜん見えなくなってしまった。次のOsterport駅が目の前というところで左に開けた場所があったのだが,ぜひとも見たいとおしゃっていたU先生もお疲れの様子だったので,無理強いしてもいけないので,今回は断念することにした。次があるとは,このときには考えてもいなかったのであるが・・・
コペンハーゲンの中心部まで戻って昼食を取り(相変わらずビールとオープンサンド。3種類のニシンのオープンサンドは美味でした),午後はお土産の買い物に費やした。ブロック玩具のレゴはデンマーク生まれで,歩行者天国のストロイエにあるおもちゃ屋さんにはレゴで組み立てられた巨大なサンタクロースがディスプレイされていた。Creatorというプロペラ機の組立キットをお買い上げ。また,日本へ帰るときの荷物が増えてしまった・・・
明日のフライトは朝6時半と早いので,フロントで朝4時のタクシーの手配をして,朝3時に目覚ましをセットして,早々に寝ようと思ったが,COPの成り行きが気になるのでWebcastをつないでみた。全体会合が始まったのは何時だったであろうか,時計は19日の0時をとっくに回り1時近くになっていたであろうか。議長が配布されたドラフトについて意見を求める。最初の発言者はツバルだ。ツバルは,このまま温暖化が進行すれば,海の中に国自体が沈んでしまうと懸念されている小島国の一つだ。どうやらこの会合の前にオバマ大統領の呼びかけで米・中・印・南アの首脳会談が行われた模様で,その会談の内容が色濃く出ているドラフトが配布されたようで,ツバル代表は,「一部の国の首脳によってのみ話し合いがもたれるというのは,国連の方式に乗っ取ったものではないことをまず申し上げたい」と批判し,その他この2週間をかけて途上国が申し入れた内容が全然配慮されていないことを述べ,そして最後に「We regret to inform you that we can not accept this document」と結論して発言を終了した。会場からは,かなりの数の拍手が起こった。国連の議決方式は,全会一致が原則である。 つまり,このツバルの発言で提出されたドラフトは再考されなければならなくなった。 この後も各国の発言が続く。米国が発言を求めたときに会場は騒然となり,結局後回しにされた。残念ながらさすがに眠くなったので,寝ることにした。結局COP15で何が決まったのかは,この後の報道で知ることになる。
12/18のデリーの天気 最高気温22℃、最低気温9℃、平均気温16℃
12/18の東京の天気 最高気温10℃、最低気温4℃、平均気温7℃
12/18のコペンハーゲンの天気 最高気温-2℃、最低気温-4℃、平均気温-3℃
COP15ーデンマーク電力事情
09/12/18
デンマーク工科大学(DTU)にて。この果てしなく続く道路の両側がキャンパスです。福祉の充実したデンマークでは,付加価値税が25%と高いですが,大学まで政府の負担で就学できます。
デンマークの典型的な発電パターン。煙の出ているのが石炭火力で,その後方に見えるのが風力発電の風車。煙は水蒸気で,インドの発電所から出ている真っ黒い煙とは違います。