Taj 多事
Taj 多事
2009
今朝のTVの天気予報では、今日のデリーの最高気温は25℃で、これまでに比べてグッと低くなるそうだ(いつもチェックしているWebサイトでは相変わらず30℃なんですけど)。理由は霧。霧で日中の太陽が遮られて気温が上がらない。この現象は、冬のデリーの名物みたいなものだ。昨年、家族が来てバラナシを訪ねたときには、この霧のおかげで行きの夜行電車が6時間、帰りの飛行機が8時間遅れた。
早くも冬の到来かと思いきや、主たる原因は大気汚染の悪化らしい。霧は水蒸気が地表近くで凝結することによって生じる現象だが、大気中に余計な浮遊物が存在すると、水蒸気がその浮遊物にくっついて凝結しやすくなる。ニュースでは、デリーにおける硫黄酸化物、窒素酸化物、塵などの大気汚染の原因になる因子の大気濃度が、許容範囲を超えて以上に高くなっていると報道していた。
これは、生活していても実感する現象である。発電所からの黒い煤煙はながーい尾を引いて空にただよっているし、晴れという天気予報でもスカッとした青空を拝める日はそんなにない。小生が、Mr. Singhのオートを使わなくなった理由の一つも、帰りのオートに乗っていると目がショボショボし、咽がヒリヒリしてくるという症状が日増しにひどくなってきたからだ。カラオケで試したわけじゃないけど、小生のソプラノは失われてしまったように思う。
この種の公害は、日本を含め先進国が経験ずみなのに、どうして同じ轍を踏んでしまうのだろう。インドの発電所のほとんどが国営である。政治家のプレッシャーでただ同然の農業への電力料金を改定することができない。その分、製造業には高い電力料金が課せられているので、製造業は電力会社から購入する量をできるだけ抑えるように自家発電設備を導入する。したがって、電力料金収入で発電コストを回収できないという状態が続き、電力会社の財政状態は悪化の一途を辿っている。ただでさえ電力不足でしょちゅう停電しているのに投資する資金を確保できない。ましてや公害防除の費用など工面する余裕がない。政府の経済計画や気候変動に関する行動計画には、この非効率を排除するという目標が常にかかげられているけれども、一向に進展する気配がない。
急成長しているように見えているインドの市場を目当てに、インドに進出しようとする海外企業もインドのインフラの劣悪さを目の当たりにして二の足を踏んでしまうという。さまざまな側面においてインドの電力部門の非効率が、経済発展のボトルネックになっているのが現状である。
農村で農業に従事する人たちは、貧しい人たちである。そして大量に存在する。この人たちから票を失いたくない政治家は、灌漑などに必要な大量の電力をほとんど無料で提供することを止めようとしない。
どうやら農村に限らず都市部も含めて貧困を解消していくことが全てのキーポイントのようだ。農村においても何の努力もしなくても電力がただ同然で利用できるから、生産性は一向にあがらないし、無駄遣いがはなはだしい。ただ、この人たちは天候などの具合によって生産高に支障があると、命にかかわるようなレベルの生活を余儀なくされている人たちだから、小泉改革のような大鉈は振るえない。
TERIがイニシアチブをとっている「10億人に灯りを」というキャンペーンで実施しているように太陽光の有効利用は、第一歩としては有効であろうが、あまりに規模が小さすぎる。農民は昼間があまりに熱いので、夜に農作業をすることも多いそうである。農村の外灯を太陽光で賄うにはどのくらいのコストがかかるのかなど、もっと具体的な検討が必要だ。
11/8のデリー天気予報 最高気温30℃、最低気温18℃、晴れ
11/8のデリーの天気 最高気温31℃、最低気温19℃、平均気温25℃
11/8の東京の天気 最高気温20℃、最低気温15℃、平均気温18℃
日曜の最高気温は、ここ数日より高かったのが実際でした。インドの予報が当たるなんて思ってはいけません。でも土曜の夜にセナさんと家に戻る途中の道は大変視界が悪く、「まだ霧じゃないよねー。公害のせいだ」、なんて語りつつ帰ってきました。
霧と公害
09/11/08