Taj 多事
Taj 多事
2009
今日のニュースで、「インドの糖尿病患者数は現在、約5,080万人と世界一で、2030年までには国民の9%が糖尿病になる恐れがあると、国際糖尿病連合(IDF)が警告を発した。」という報道があった。
現時点で約5千万人というのは全人口の5%程度に相当する。この数値が高いのかどうかは議論のあるところであろうが、高いにちがいない。おそらく、インドにとってより深刻なのは、糖尿病になり得る生活を送れる人口に限った場合に、その割合がぐっと高くなるという事実であろう。仮に糖尿病という贅沢病になり得る生活を送れる人口が全人口の半分弱の5億人とすれば、その割合は10人に1人になる。
デリーの街を歩けば、道行く人の生活水準はおおよそ想像できる。栄養不足と栄養過多に二分されて中庸を探すのが難しい。特にスポーツの結果として健康的に見える人は若者を含めて皆無に等しい。
道を歩いているのは、栄養不足に属する人々だ。つまり、この人たちにとって乗り物に乗ることは贅沢である。アパルトヘイトの時代の南アではないが、ある種の人たちは、あらゆる乗り物に乗ることを許されていないのではないかと感じることがままある。
一方、栄養過多に属る人たちは、ちょっとの距離だろうがオートやリキシャを使う。メトロのヤムナ・バンク駅では、巨漢(男女を問わず)を自転車に乗せて、坂をこいで登ることができずに押している気の毒なリキシャの運転手をよく見かける。体格を見るかぎり、運転手と乗客の立場を逆転しないと、どうにも釣り合いが取れるようには見えない。
菜食主義者が健康的にであるというのも大間違い。こちらでは、非菜食主義者でも、毎日肉や魚を屠るわけではない。菜食主義者でも、動物性の油、チーズ、バター、ヨーグルトは、食べるのが普通である。特に牛やヤギの乳から作ったギーと呼ばれる油をふんだんに使うのが一種の贅沢のように、カレーの上からたっぷりとかけられている。そして、間食に食するのはカチョーリ、サモーサ、パコーラといった揚物で、揚げるのに使われるバスナパティという油は、心臓病の元凶として悪名高き代物である。
世界はグローバル化していると言われている。昨今の米国のサブプライムを発端とする不況もあっという間に世界中に広まったし、豚インフルエンザも然りである。携帯電話、インターネットという技術もそうだ。一見何も資産をもたないように見えるサイクル・リキシャの運ちゃん達だってモバイル・フォンを持っている。でも健康とか環境などに関する知識と保全のための実践は、これだけ世界中で問題になっていても隅々にまで浸透しているとは決して言えない。どうやら教育というバリヤーが立ちはだかっているようである。携帯とかインターネットという技術は、この障壁を乗り越えるために有効に使えると思うのだが、未だそのようには使われていないようだ。人間の生活を便利にするために開発されてきた技術を、人間の潜在能力を実現することに関して存在する不平等を解消するために如何に活用するかという課題は、21世紀に生きる我々に課されたチャレンジであろう。
10/26のデリー天気予報 最高気温31℃、最低気温17℃、晴れ
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インドの生活習慣病
09/10/26