Taj 多事
Taj 多事
2009
早いもので、家族がインドに滞在するのも残すところ今日と明日だけになってしまった。デリー(Delhi)については、主たる観光地も全然見てもらっていないので、今日は車でデリーを回る。といっても、子供たちが飽きないようなプログラムで回る。
10時に車に迎えに来てもらって、まずはオールドデリー(Old Delhi)に向かう。地理的に見れば、デリーの北東部がオールドデリー、中心から少し北にあるコンノート・プレース(Connaught Place)から南の地域がニューデリー(New Delhi)と呼ばれる。歴史的に見れば、大英帝国によって1911年にコルカタ(Kolkata、旧カルカッタColcutta)からの遷都が宣言され、1931年に完成した都市が現在のニューデリーで、1947年の独立以降もここに首都を定めている。タージ・マハル(Taj Mahal)を建造したムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンがアグラ(Agra)からデリーに遷都し、自らの名を冠した都市シャー・ジャハナーバード(Shah Jahanabad)を建設した(1648年に完成したが、その前にシャー・ジャハーンはアグラ城に幽閉されている)。シャー・ジャハナーバード一帯をオールドデリーと呼んでいる。その中心がレッド・フォート(Red Fort、ラール・キラーLal Qillaとも呼ばれる)、「赤い砦」と呼ばれる赤砂岩でできた城で、その都大路がチャンドニー・チョーク(Chandni Chowk)と呼ばれる。
車は、セナさんと日本語を一緒に勉強したという女性店主が営業する土産物屋の前で止まり、その店にあらかじめ配しておいてもらった人力車(サイクル・リキシャ)でオールドデリーを観光する。行き先や時間を、もう一度セナさんから電話で直接指示をしてもらう。人力車2台に妻と二男と三男、長男と小生で分乗する。人力車は、レッド・フォートの横を抜けジャマー・マスジッド(Jama Masjid)へ向かう。レッド・フォートには入らなかったが、この通りから見るレッド・フォートにも一見の価値がある。この通りからは、インド国旗が聳えるラホール門(Lahore Gate)が一望できる。独立直後におけるジャワーハル・ネルー(Jawaharlal Nehru)などによる重要な演説は、ここから国民に伝えられ、いまでも独立記念日の8月15日には首相がラホール門から演説を行う。
人力車が通りを左折すると、その行き止まりがジャマー・マスジッドだ。ここは、インド最大のモスリムのモスクで、シャー・ジャハーンが建てたものだ。広い階段を上って、靴を脱ぎ、南門から中庭に入る。この中庭は2万5千人を収容できるそうなのだが、鳩の糞だらけで靴を脱いだ足で歩くのに難儀する。タージ・マハルでもらったシューズ・カバーを持ってくればよかった。イスラムの休日である金曜日には、ここで集団礼拝が行われるそうだけど、モスリムの人達はここに頭をすりすりするのかしら?と余計なことを考えてしまう(魔法の絨毯のような布を敷いていたか)。東側からはレッド・フォ−トを一望できるそうなのだが、霧でほとんど見えない。またしても、三男が尿意をもよおし、早々にジャマー・マスジッドを後にする。
人力車は、シャー・ジャハナーバードの都大路チャンドニー・チョークを一周する。花、布、貴金属、本、自動車部品、肉など同業種が集まった店構えをした小路が毛細血管のように入り組み、その中を車、リキシャ、大八車、人がゴッチャゴチャに行き交うという、まさにカオスという以外に呼びようのない場所だ。案内なしでは、迷子になってしまうに違いない。通りのありようだけではなく、電線もすごいことになっている。途中で輪を描いたり、たわんで人の頭につきそうになっているし、途中で切れているものもそのままぶらさがっている。途中、貴金属屋の中で、とんでもない大声で口喧嘩をしているのを目にする。インド人は議論好きというが、手を出さないのは偉い。肉屋街では、檻の中に切り落とされた羊の頭が一杯に詰まっている。自動車部品屋では、タイヤとホイールが店先を賑わせている。こないだ工芸博物館の前で燃えて、次の日には跡形もなく消え去った車の部品もこの中のどこかにあるにちがない。
オールドデリーの観光はこれでおしまい。お決まりで、人力車を紹介してくれた店に連れ込まれたが、セナさんの知り合いということもあるので、申し訳程度にガネーシャのキーホルダーとペンダントを買って、次の場所に移動する。
次は、ガンジー・スムリティ(Gandhi Smriti)。小生は、ここへ来るのが三回目。Mr. Singhよりは上手くガイドできるのではないかと思う。家族も映画『ガンジー』をDVDで見ているので、映画の冒頭の暗殺シーンはよく覚えているいるようで、ここがその場所で、映画の撮影でも使われたことを知ると興味津々である。映画『ガンジー』でガンジーを演じたベン・キングスレーが映画『サンダーバード』で悪役フッドを演じているので、子供たちも映画のガンジーの顔を鮮明に記憶していて、キングスレー演じるガンジーが本物とあまりに似ているので、ビックリ。観光というのも、その場所の景色を堪能するだけでお腹一杯という場所も多いけれど、ことインドに関しては歴史的な事情を知っているとますます楽しくなってくる。瞬間的にだけでも、その時代にワープした気になれるのがおもしろい。
時刻は午後1時を回っているので昼食をとる。今日は、ニュー・シッキム・ハウス(New Sikkim House)という紅茶で有名なダージリン(Dargiling)があるシッキム州の郷土料理の店を選んだ。というのは、女優中谷美紀さんの『インド旅行記3』で現地で食べたトゥクパ(Thukpa)というシッキム風のうどんが大変美味しかったと書かれていたので、ぜひ一度味わってみたいと訪ねた次第である。ニュー・シッキム・ハウスは、大使館などが集まるチャナキャプーリ(Chanakyapuri)地区にあり、ここは州政府関連の建物らしく、レストランだけでなく物産の展示などもあったようだ(隣にはSikkim Houseという州政府の出張所があり、最初そこと間違えた)。ベジとノンベジのトゥクパを一つずつと、チキン焼きそばを2皿注文した。いずれもベジメニューがRs. 45で、ノンベジメニューがRs. 50と大変庶民的なお値段。トクゥパは、きしめんの半分程度の幅太麺がうどんと湯麺の中間のような透明なスープに入って出される。味は、非常にさっぱりしていて、インドの少々油っこいカレーに慣らされた胃には大変やさしくて、美味しい。それよりビックリしたのは、焼きそば。いろいろなところで焼きそばを食したが、うんと美味いというものには巡り遭うことはなかった。ここのは、うんと美味い!少し餡でからめたようになっていて、日本の中華料理店で食べる焼きそばに匹敵する美味さ。回りを見ると水餃子のようなものを食べている人達がいる。あー、あれ何だっけなー、と思いつつも名前を思い出せない。お腹も一杯なので、次回までに思い出しておくことにする(ラッキーなことに、この後行ったディリー・ハートで食べることができた)。このレストランも何人かで集って来ると楽しそうだ。
外へ出ると運転手さんが見つからない。どこかで食事でも取っているのかと思ったら、車の中で昼寝をしている運転手さんを二男が発見。申し訳ないが、起きてもらって、鉄道博物館(Rail Transport Museum)に向かう。ここも同じチャナキャープリー地区にあるのですぐに到着。館内展示はそんなに多くないのだが、中には列車に激突した象の頭蓋骨なんてインドならではの展示もあった。外には、子供むけの汽車が場内を一周するアトラクションがあって、家族全員で乗り込んで一周。場内には、時代物の機関車が数多く展示してあり、そのほとんどに実際に触って、操縦室に乗ることができるので、子供たちはご機嫌だ。特に、三男にとっては、中央家内工業物産店街で売っていた木製の梯子車とこの鉄道博物館が一番のお気に入りだったようだ(そうそう、その梯子車を誕生日のプレゼントで、小生が日本に帰るときに買って行ってあげることを約束したのを忘れないようにしないと)。
時刻はすでに4時に近い。時間があればクトゥブ・ミナール(Qutb Minar)などへも足をのばそうと考えていたが、もし次回があれば、それまでお預けということにする。最後に、ディリー・ハート(Dilli Haat)という各州の手工芸品店が集まる屋外型のショッピング・センターへ行く。ここも買うことを強要されないので、安心して買い物を楽しむことができる。だた、売る方はなんとか売りたいと思うので、必死に商品の説明をしてくるのが中央家内工業物産店街とは違うところ。中央家内工業物産店街では、こちらから聞かないかぎり店員は声をかけてきません。それと似たような商品を扱う店舗が複数あるので、自然と競争原理が働いているように見える。つまり、他の店舗より少しでも安く売って、客を引きつけようという努力が伺えるのが、Mr. Singhなどが連れて行く旅行者専門のぼったくり店とは違うところだ。もういいかげん、買い物には飽きたかと思いきや、妻は手書きの模様が施された写真立て、長男、二男そして小生は刺繍の綺麗な肩掛けバッグを購入。
ディリー・ハートのもう一つの楽しみが、各州から出ているフード・コート。シッキム州の屋台も出ていて、メニューを見ると、ありました、ありました、そうですモモ(Momo)です、先ほどレストランでみた水餃子。店員に一皿で何個入っているのか尋ねると、8個だという。それでRs. 60。チキン・モモを一皿注文。うまーい!スープがいっしょにサーブされるが、このスープにはほとんど味がないので、テーブルにある豆板醤や塩やコショウで味をつけて、スープ餃子としても楽しめる。もう一皿追加。三男もお気に入りで、おそらく彼にインドで何が一番おしかったと聞けば、モモとピザとチャパティと答えるにちがいない。最後に、小生がガジャル・カ・ハルワ(Gajar Ka Halwa)というニンジンのスイートを一皿買ってきて、みなさんに食べてもらったが、子供たちには評判が悪く、妻と半分づつ食べた。
家に戻ったのは6時半過ぎ。無事戻ったことをセナさんに電話する。今日はセナさん一家も外出で、帰りはかなり遅くなるということだ。子供たちはバビーと遊べないのが残念そうであるが、明日の帰国の準備をさせて、早目に休むことにした。
1/3の天気 最高気温14℃、最低気温7℃、平均気温10℃。
デリー観光
09/01/03
人力車に乗ってオールドデリーを観光しました。
チャンドニー・チョークは、花、布、貴金属、本、自動車部品、肉など同業種が集まった店構えをした小路が毛細血管のように入り組み、その中を車、リキシャ、大八車、人がゴッチャゴチャに行き交うという、まさにカオスとしか呼びようのない場所です。
電線もカオスです。
鉄道博物館では、時代物の機関車にたくさん乗れて子供たちもご機嫌です。