Taj 多事
Taj 多事
2008
今日は、Mr. Singhのリキシャで小生がベースにしているIHC(India Habitat Center)へ行ったり、買い物をしたりする予定だ。前もって彼には伝えてあったので、9時ごろにMr. Singhから眠そうな声で何時に迎えにいけばよいかと電話があった。まだ、こちらの準備が整っていなかったので10時ごろにかけなおす約束をして一旦電話を切る。
10時45分にラクシミの交差点で待ち合わせることにして、10時半に家を出る。指定の場所に行ってもMr. Singhはいない。気が焦ってそこらをうろうろしていたようだ。昨日と同じようにリキシャに乗り込み、まずは彼のベースである工芸博物館(Crafts Museum)へ行く。自分がガイドをするといって彼ももついてくる。ここは、博物館と工芸品販売の二部構成になっていて、最初に博物館から見学する。Mr. Singhは、博物館の係員と挨拶をするたびに、ここの人達はみな自分を知っているんだと自慢げである。そりゃ毎日ゲートの前で、外国からの観光客をカモにしていればみんな知っているだろう。博物館には、祭りのために家庭の主婦が描いた宗教的な絵など、生活の中から生まれた芸術作品が展示されている。どれも素人の作品とは思えない見事なものである。ちょっとした質問をMr. Singhにするたびに、彼は係員に聞きに行く。いつものことだが、ちっともガイドの役割を果たしていない。
昨日たっぷり買い物をしたので工芸品の販売には興味がない。地方から販売に来ている人達にいい顔をしたいMr. Singhは不服そうで、きっとお前達が見たことがない民族舞踊をやるからぜひ見ていけという。民族舞踊には興味がある。Rs. 50でもRs. 100でも払った金額に応じた時間で踊るというが、子供たちもいるのであまり長い時間はもたないと考えて、一人Rs. 10で合計Rs. 50を支払う。そもそも民族舞踊、とくにインドの民族舞踊は、ラーマーヤナなどの神話を演じることが多いと聞いているので、料金によって神話が短くなったり長くなったりするのは不思議であるが、商売は商売ということか。本当は、踊りのストーリーをあらかじめ説明してくれるとわかりやすいのであるが、Mr. Singhはここでも役に立たない。ヒンドゥーの神話には興味がない。踊りは、静から動へのクライマックスに向かって激しさを増し、見て損のないものであった。最後に出演者全員でやぐらを組んで、写真撮影に応じてくれたが、気がつけば後から来た観光客の人集りである。そりゃそうだよね。
続いて、紅茶を買いたいという妻のリクエストで、スンダー・ナガル(Sundar Nagar)のミッタル・ストア(Mittal Store)へ向かってもらう。この店は、この地に滞在する外国人に有名な店で、Mr. Singhも場所を把握していた。あー、ここは昨年コンファレンスの帰りに連れて来られたところだ。あのときはIHCから随分遠いと思ったけど、十分歩ける距離にあるではないか。ここも様々な種類の紅茶と様々なグレードの紅茶を揃えている。ただし、高いものを押し付けるというのではなく、本当によいものはそれがわかるお客にだけ勧めるそうで、お客のニーズに会わせて親切に対応してくれる。
そのよい例が、ティー・パックだ。元来、茶葉だけの商売をしていたそうだが、ティー・パックのリクエストが多い、マンゴーやアップルなどのフルーツの香りをつけたお茶をティー・パックにして売り始めたそうだ。今回ご主人に、このティー・パックを三つづつ小袋に詰めてくれないかとリクエストしたところ、やってみましょうと、店員に指示を出してくれた。マンゴー・ティーのティー・パックを三つを小さなビニール袋に入れ、それを巾着の形になるように金のモールで留める。ご主人からこれでOKかと聞かれたので、もちろんOKだと答えると、ご主人は、このような形で売ったのは初めてで、たいへんよいアイディアなので採用させてもらうということだ。
さらに、フルーツ・フレーバーのお茶を作る行程の副産物でできたドライ・フルーツも売っている。お茶の方は、まだ納得がいかず研究中ということであったが、食べさせていただいたナシのドライ・フルーツは美味であった。
この客のニーズに対応した企業家精神をぜひMr. Singhにも見習ってほしいものだ。彼は、店内の椅子にどっかりと座り込み、出された紅茶を飲み干し、ご主人に小生を紹介した後は、何を頂戴しようかということだけに御執心である。
ご主人(Vikram Mittalさん)は、もともとはIIT出のエンジニアで、お父さんが引退した後この店を引き継いでいるそうである。ティー・パックの袋詰めを作っている間に、名刺を交換したり、いろいろな話をさせていただいた。さすがにエンジニアというだけあって、小生の専門に関わる領域の話でもかなり専門的な知識を持って話をされていた。帰りがけに、オフィスでどうぞとティー・パックの箱を2箱とマンゴーとナシのドライ・フルーツをいただいた。お互いに、これからもよろしくと挨拶して店をあとにした。気がつけば、両手は大量の紅茶が入った紙袋でふさがっている...
昼食を取るためにディフェンス・コロニー(Defence Colony)にある南インド料理サガール(Sagar)へ向かってもらう。この店は、現地の人にも人気で、本格的な南インド料理を食べさせてくれる。すなわち、安くて大変美味しい。Mr. Singhは何でサガールなんだ、なぜピンディ(Pindy)に行かないとご不満である。ピンディでは、彼は店からのおこぼれに預かれるが、こちらは高くてたいして美味くもない料理を食わされる。そうはっきりとMr. Singhに告げてディフェンス・コロニーへ向かう。彼には、3時にロディ庭園(Lodi Garden)に来てもらうことにして、われわれは食事の後、歩いてIHCへ行き、そのままロディ庭園まで歩く予定だ。
サガールでは、イドリ(Idli)、ドーサ(Dosa)、ターリ(Thali)を注文する。イドリは米粉で作った蒸しパンで、これにサンバル(少々辛めでスープのような野菜カレー)やチャツネ(ココナッツと青唐辛子をすり潰した薬味)を付けて食べる。ドーサもイドリと材料は同じで、クレープのように薄く引き伸ばして鉄板で焼く。ジャガイモを潰してマサラでスパイシーな味付けにしたものをドーサで巻いた、マサラ・ドーサ(Masala Dosa)、タマネギのみじん切りを練り込んで焼いたオニオン・ドーサを注文した。食べ方もイドリと同じでサンバルやチャツネを付けて食べるのがご当地流であるが、そのままでもいける。ターリはおなじみの定食だ(サガールのターリについては2008年10月18日の「Taj 多事」に書いている)。
意外なことにイドリはみんさんに不評で、ドーサをそのままと、ターリの中からスパイシーでないものを選んで食べている。この辺で食べるインド料理は、うーんと辛いとか、どうしょもなく香辛料が効いているものはないので、もう少しスパイシーな食べものに慣れないと、ほんとうにサバイバル生活になってしまいます。
サガールを出て、ディフェンス・コローニーにある、以前小生が暮らしていたTERIのゲスト・ハウスがはいっている住居の前を経由して、露店街へと抜ける。この通りは、シャカルプールに負けず劣らずインドっぽいところで、通りの両端には様々な露店が出ているし、野良牛もやたらといる。ここをIHCの方に直進すると踏切がある。残念ながら貨物列車が通過中で、遮断機の下をくぐり抜けて線路を渡るという経験はできなかったが、踏切待ちの車、リキシャ、バイク、自転車、人、牛が踏切の両側でいっぱに広がり、遮断機が開いた途端に大パニックになるところは見ることができた。おまけに10頭余りの野良牛が、立て続けに線路を横断したものだから、車も人も立ち往生。これは小生も初めての経験。
そのまま北進して、小生が毎日のように昼食を食べるGulab'sの前を通過するために少し右に入ると、野良牛がえらい勢いで放尿しているのを見た二男は大興奮。道が濡れているのがすべて牛のおしっこだったらどうしようと変な心配をして不安になっている。
裏門からIHCに入り、リトゥ(Ritu)に電話をすると今なら時間があるというので、TERIのある建物3Fにある彼女の部屋に向かう。いつもは多くても3人で議論をする程度の大きさの部屋であるから、5人で押し掛けるとたいそう狭い。仕事の邪魔をしてはいけないので、紹介と挨拶だけにしておいとまする。こちらのスケジュールと都合が合えば、彼女の家に招待していただけるとのことだ。小生の職場を見るために2Fに降りると、隣席のツシタ(Tushita)が「A Happy New Year」と子供たちにチョコレートを一つずつ分けてくれた。
すでにMr. Singhと約束した3時を過ぎているので、彼に電話をして遅れる旨を連絡。IHCを後にして、すぐそばにあるロディ庭園へ行く。ここには、サイイド朝やロディ朝の支配者達の墓が点在し、庭園と呼ばれるように広い敷地内にはよく手入れされた芝が敷き詰められ、多くの緑に囲まれた散策路もある静かな公園である。ロディ廟(Lodi Tomb)の前に広がる芝で子供たちは走り回っているが、そんなに走るのが好きだったかしら?長男にからかわれて後を追う二男は、過体重につきすぐバテル。辛いカレーを食ったわけでもあるまいに、一人だけ大汗をかいている。三男は相変わらずマイペースで走り回っている。逆にちょっかいを出すとギャーギャーうるさい。
再びMr. Singhのリキシャでカーン・マーケット(Khan Market)へ向かう。ここは、デリー在住欧米人御用達のマーケットだ。小生は、本屋によるためによく来る。ステーショナリーの店に立寄り、妻はインドっぽい柄の封筒などを買いも求める。小生もインドっぽい柄のブックマークを買う。子供たちも何か買ったかな?マーケットを一周しながら歩いていると、インドに来たばかりという日本人のお嬢さんが酒屋はありませんかと聞くので、マーケット内にあっていつもKingfisherのビールを調達する酒屋を教えてあげたけど、ちゃんと着いたかしら?
今晩はセナさん一家と食事をすることになっているので、早目に帰ることにしてMr. Singhにいつものラクシミ交差点まで送ってもらう。実は、彼からは日本製の腕時計と彼の三人の子供のために3色ボールペンを3本買ってきてほしいと頼まれていた。彼の日本製腕時計の予算はRs. 500、つまり日本円で1000円以下であるが、そこまで安いのは見つけられなかったので、日本円で2000円の腕時計を妻に買って来たもらった。ボールペンと合わせてRs. 1500。セナさんならともかく、毎土曜日に昼飯とおやつを馳走しているMr. Singhにプレゼントする理由は何もないので、小生の運賃10回分でどうだと持ちかける。OKということで交渉成立。ただし、今日は朝から付き合っているからRs. 700よこせという。途中3時間も拘束しない時間があっただろうと言ってやろうと思ったが、あまり意地悪を言っても大人げないので、Rs. 700を支払う。彼は、小生の家族がデリーに滞在している間は、たっぷり儲けてやろうと画策しているようだが、こう寒くては一日中リキシャで移動するのは厳しいので、今日限りになるだろう。後日談ではあるが、Mr. Singhが日本から買って来た時計をしてるいるのを未だ見ていない(2009年1月9日現在)。まさか、売っちまったんじゃないだろうな?やつならあり得る。
家に戻ったのは6時半過ぎ。7時15分ごろセナさんの車で、V3Sの近くにあるネルラ(Nerla's)というチェーン店へ出かける。本当はとっておきのインド料理の店に連れていってもらうはずであったが、昨日差し入れてもらったカチョーリでも子供たちにはスパイシーだということを知って、急遽何でもありのチェーン店に変更してくれたそうだ。インドでは夜10時ごろに夕食を取るのが普通で、大晦日の今日は夕食の時間帯には予約が一杯なので、セナさんたちにはちょっと早めの夕食になる。ネルラの1階はWinpyと同じようなファーストフードになっていて、2階がレストランになっている。席に着くとほどなく、セナさんの家族もやってきた。11月に結婚したばかりのセナさんのお兄さんの二男夫婦も一緒だ。
子供たちも食べられるようにと、タンドーリ・チキン、バター・チキン(Chicken Curryはスパイシーだが、Butter Chickenはスパイシーではない)、野菜のカバブ(春巻きのように野菜を薄皮に包んで焼いたもの)、チャパティ(パン)、そしてピザを2種類注文する。それと子供たちにはヨーグルト飲料のラッシー。なんとインド組は、全員がピザを注文。みんなどんなものを頼んで、どんな食べ方をするのか、小生が知らないインド料理が出てくるのではと期待していたのに、がっかり...きっと、こういうところのインド料理は口にあわないのだろう。おもしろいもので、ここで出されたピザは、生地がパンのようで、妻と小生にとってはちょっとという感じだった。でもみなさんと子供たちには、お気に入りのようだ。特に三男は、家を出る前にどうせ外では何も食べられないだろうと、フリーズドライの雑炊を二杯も平らげてきたのに、ピザを4枚も食した。いままで、ひもじい思いをしていたのだろうか?1時間半程おしゃべりをしながら食事を楽しんで家に戻ることにした。すっかりセナさんに御馳走になってしまいました。
われわれがバラナシに出かけていた27日はセナさんの奥様のミナシさんのお誕生日だった。われわれがバラナシから戻る29日の夜に、みんなでケーキを食べてお祝いをしようと考えていたらしいのだが、飛行機の遅延で帰りが真夜中になってしまったので、それを今日やるそうである。ケーキはネルラに頼んであって、子供たちのリクエストで、ネルラでHappy Birthdayをやるのではなく、セナさん宅で祝うことになった。
ケーキにロウソクをたてて、Happy Birthdayを歌って、ローソクを吹き消すところまでは世界共通。インド流は、ケーキを小口に一切れ切り、それをお誕生日の人が年齢の若い順に一口づつ食べさせていく。それが終わったところで残りのケーキをみんなに配る。甥っ子さんの結婚式の様子をPCの画面で見せてもらいながら楽しい一時を過ごした。子供たちは、セナさんの長男バビーにクリケットなどのコンピューター・ゲームを見せてもらって喜んでいる。今度ゲームをやりに遊びに来てもよいかと聞くので、英語を話すならよいよと答えると、妙に張り切っていた。明日はアグラ旅行で朝が早いので、10時を過ぎたところでおいとまする。
今日もながーい一日でした。
12/31の天気 最高気温13℃、最低気温7℃、平均気温10℃
Happy Birthday Minasi
08/12/31
工芸博物館(Craft Museum)で見た民族舞踊のエンディング。話の内容を知っていると、もっと楽しく観劇できたと思います。
セナさん宅で奥様のミナシさんの誕生日のお祝い。今切っているケーキを年齢の若い順にミナシさんが一口ずつ食べさせて回ります。