Taj 多事
Taj 多事
2008
4時50分起床。仕事の続きをして、6時半ごろからストレッチなど体を動かし、シャワーを浴びながら洗濯。今日は土曜日なので、また家のダイニングで仕事だ。昼には、Kahn Marketに行ってみよう。いい本屋があるらしい。
10時にセナさんから電話があり、明日の都合が悪くなったので、これから会えないかということだ。もちろん、二つ返事でOKした。30分ほどでDefence Colonyに到着するという。身支度を整えて、10時20分過ぎに外へ出て待つ。ほどなくセナさんが、車で到着し、そのままSmile Inn、つまりセナさんの自宅へ向かう。Indian Gateの横を通り、左に行けばConnaught Placeという交差点を右折し、まもなくヤムナー河(Jamna River/Yamuna River)を渡り、Shakapurというところにセナさんのお宅はある。車で30分弱というところか。
高校3年生の息子さんが出迎えてくれ、そのままSmile Innを見せていただく。セナさんのご自宅と隣接というより一体になっていて、門を入ると、正面奥がセナさん宅の玄関、右がSmile Innの入口になっている。セナさん邸で通りに面した部屋が、Smile Innだ。ただし、この入口を使わないと行き来はできないようになっている。入口を入るとすぐ階段で、1Fがリビング、キッチン、バスルームで、2Fが寝室という構成だ。『地球の歩き方』には二部屋あると書いてあるが、もう一部屋は別の建物にあり、そちらはGoni Trabelを始めてからは閉じているのだという。 今のところでは、リビング、キッチン、バスルームはシェアであるが、ここでは一人で使うことができる。
寝室は、広さ8畳弱といったところで、シングルベッドが二つ並んでおいてあり、壁には大きなタンスが埋め込まれている。二面にバルコニーへ出られる大きな窓があって明るくてよい。明るさ大きさともに、いまのところより相当によい。バルコニーで洗濯物も干せる。もちろんクーラーつき。デスクはないので、仕事には下のリビングを使うことになる。背もたれのない二つのソファーが中央のテーブルを囲むように配置されている。広さは6畳弱という感じだが、ここも窓から明かりが取れ、一人で使うには十分の大きさだ。
次に近所を紹介していただく。最初に宿泊したJor Baghと今住んでいるDefence Colonyは、いわば高級住宅街だ。日本でも同じであろうが、そういうところは、余所者にとっては疎外感がある。ましてや、広い住居の中に一人だけでは、その疎外感に拍車がかかる。それぞれの豪邸の門の前には、警備員が鎮座していて、気軽に行ったり来たりという雰囲気もなく、 ご近所付き合いがあるようにも見えない。どちらにしても、ひとたびColonyの中に入ってしまうと、インドの社会が見えてこない。何か特殊な一面を見ているに過ぎないような気がしてくるのである。
それに対して、ここは、生活感が一杯である。すぐそばに、食堂、チャイ屋、ジュース屋、床屋、クリーニング屋、病院などが並び、その小道を抜けた大通りにはフルーツを売る荷車がたくさん出ていて、コンビニも2軒ある。人が頻繁に行き来している。セナさんに会えば、みな挨拶をする。二つのColonyに通りを隔てて存在していたのは、言葉は悪いが貧困街である。もちろん、ここは、そのなものでもなく、中間層が普通に生活している空間である。決して疎外感ではない、異国にいるという実感が湧いてくる。そして、生活しているうちにとけ込めそうな気がしてくるのである。
一通り見学させていただき、セナさん宅のリビングにお邪魔する。玄関を入るとすぐにダイニングがあり、その奥がキッチン、玄関のすぐ左を二三段おりると10畳ほどのリビングが広がっている。ダイニングの脇には階段があり、上がプライベートスペースになっているようだ。このグランドフロアの造りは大変気に入ってしまった。将来、家を建てることがあれば、見本にしたい設計である。
セナさんの奥様が、まずは冷たいコーラを出してくれた。飲み終えたころに、マサラ入りチャイとポテトチップスとクッキーをご馳走になった。丁度、Delhi大学の一つカレッジの1年生であるお嬢さんの統計学の家庭教師が帰ったところだという。大学生の家庭教師?と思うのは当然であるが、その事情はおいおいわかることになる。小生も大学で2年生に統計学を教えているという話をすると、セナさんが「教科書を持ってこちらにおいで」とお嬢さんを呼ぶ。
三人でいろいろと大学についての話をした。インドでは、学部を終えただけでは、思うような職につけいないので、ほとんどの学生が2年間の大学院に進むのだそうだ。彼女はMBAへの進学を希望しているのだが、その競争がなかなか激しいらしい。それで必死に勉強しているとのことだ。それにしても自習ではなく家庭教師とはどういうことだろう。インドの国立大学では、カーストの階級ごとに定員が割り振られているそうだ。なんと、指定カースト(不可触民)には全体の40%が割り当てられている。そして、成績で入学してくる一般という枠は、15%しかない。一般枠は、ある成績以上のものであるから、学力に関しては均質的である。ところが階級による指定枠で入学した学生は、様々な意味で異質で、授業が成り立たないそうだ。特に指定枠で入学してきた学生は,入学できるという権利を行使して入学してきただけで、勉強にはまったく興味がない。授業内容も底辺に合わせた内容で、意欲のあるものには物足りない。最悪なのは、授業中であるいにもかかわらず音楽を演奏し始めたり、携帯で話すなんてのは当たり前だ。教師が注意しても聞かず、いわゆる学級崩壊。教師も教師で、授業を放り出していなくなってしまうそうだ。ということで、学校が終わったあと、または休日に何人かで別途授業料を払って大学の先生に来てもい授業をやってもらうのだという。悪平等が生んだ、なんたる非効率。大学の教員にとっては、この非効率が故に、学生の弱みに漬け込んで副収入を稼げるというメリットも発生しているから、この非効率はなかなか解消しそうにない。いずれにしても、非常に意欲を持って勉強している学生がたくさんいることは確かで、このグローバル化した世界の中で、日本の学生達はしっかりと自分の足下を見て努力していかないと、この人たちと対等に商売もできなくなってしまうだろう。
そんなこんなを1時間弱話して、肝心な家賃の話にはいる。電気などユーティリティ混みで、いまのところより日本円で¥8,000円ほど高い値段で住まわしていただけるという。お嬢さんが通う大学まで、Rickshawで40から50Rs、Habitat Placeまではもう少し距離があるから、毎日往復の交通費が100から120Rsはかかりそうだ。ざっと計算して、予算の範囲内だ。TERIのSudheerさんに相談して、できるだけ早く引っ越すことにしよう。もう一つの用件であった、27JBGHの領収書を書いていただき、セナさんに車で送ってもらい帰宅した。
ダイニングでこれを書いている最中、なにやら急に騒々しくなってきた。チャイムが鳴り、なにかと思えば、TERIから掃除に来た。掃除人がいなくなったと思ったら、一家族が向かいの家族部屋に入ってきた。確かに、台所に、これは003号室のものという張り紙が数枚はってあったので、不思議に思っていたのだが、向いの住人は、一時的にどこかに行って、再びゲストハウスに戻ってきたようだ。挨拶をしても、奥さんと子供は全く無視。そういえば、この奥さん、最初に見学にきたときに、連れてきてくれた職員が鍵を持参せず、チャイムを鳴らしたことに大層憤っていた。やはり、これでは息苦しい。早々に退散すべきだ。
新居見学
08/10/11