
21世紀に入ってからの日本経済を振り返ると、バブル崩壊後の長引く不況から緩やかな成長へと転じ、 2005年後半から2006年にかけては大きな成長ぶりが見られるようになってきている。 しかし企業不祥事は相変わらずの多さを見せ、企業の世の中での存在意義とその社会的責任の大きさは 益々クローズアップされるようになってきた。
そのような状況において本書では、企業倫理を専門とする梅津と企業評価を専門とする岡本が、 それぞれ全く異なった立場からCSRへのアプローチを考えている。相異なる問題意識から CSRを論ずるため企業評価を扱う第一部と企業倫理を扱う第二部には意見の異なる部分も存在する。 しかしながら論理を展開していくと両者にはかなりの共通点があり、最終的に目指すものは同じである、 という意識が『企業評価+企業倫理』という書名に込められている。
本書は慶應経営学叢書の第1期刊行分の1冊という位置づけであるが、 これは商学部50周年を記念した叢書となっている。慶應義塾大学商学部の起源は 日本に初めて経営学・会計学・商業学を紹介した福澤諭吉の時代、1890年創設の理財科まで遡る。 理財科は現在の経済学部として存続するが、商学部はそこから独立し、1957年に誕生している。 これは翌1958年の慶應義塾100周年を記念してのことであった。著者の梅津と岡本は 1957年と1958年の生まれであり、まさに商学部とともに生まれ育ってきた。 本書を刊行するに当たり、多くの方々からご指導を戴いてきたが、まずは商学部という存在に感謝したい。 そして近年の慶應義塾大学商学部の経営学部門をリードしてこられた 慶應義塾大学名誉教授植竹晃久先生(現白鳳大学教授)・商学部教授十川廣國先生には 常に貴重な助言を頂戴したことを明記し、感謝したい。また慶應経営学叢書編集委員会のメンバーである 今口忠政先生、渡部直樹先生、榊原研互先生には大変お世話になった。 特に叢書プロジェクトをスタートさせ、常にリーダーシップをとってこられた今口先生なくして 本書は陽の目を見なかったであろう。厚く御礼申し上げたい。 最後になったが本書出版にあたり多大なご協力を戴いた慶應義塾出版会の藤村信行氏・木内鉄也氏に 深く感謝の意を表す次第である。
2006年初夏
三田山上にて
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