企業評価論をひとことで言えば、良い企業とは何か、悪い企業とは何かを考える学問である、とも言える。そしてその企業評価の研究領域は大きく二つに分けられる、と私は考えている。ひとつは、何をもって良しとするのかという、視点・基準の研究である。これは、評価をするからにはその基準が必要であり、それをどのように設定するのかを考える研究領域である。もうひとつは、どのように評価するのかという、手法・方法の研究である。データ量が多種多様になってきている現在、従来の多変量解析法に加えて、人工知能、特にエキスパートシステムなどの応用が考えられる。これらのうち前者はいわばWHATの研究といえ、後者はHOWの研究と位置づけることができる。このような問題意識に基づいて最初に纏めたものが、拙著『企業評価の視点と手法』である。
HOWをさらに発展させ、人工知能分野のエキスパートシステムに加えてニューラルネットワークの企業評価への応用を考え、さらに両者の統合を試みたものが拙著『AIによる企業評価』−人工知能を活かした知識モデルの試み−、である。そして、WHATの発展として、良い企業の基準として従来の収益性・成長性に加えて社会性をも加えよう、という試みからCSRへのアプローチを考え、実際の社会性モデルを構築したものが、梅津光弘氏との共著『企業評価+企業倫理』CSRへのアプローチ、である。
WHATに絞って纏めたのが、拙著『社会的責任とCSRは違う!』である。良い企業の基準として、儲かっていて伸びている企業、すなわち高収益性・高成長性が考えられる。しかし現代企業にとって、とくに大企業にとってはそれだけでは十分ではない。社会的影響力の大きさを考えると、社会に対する良い影響、すなわち高社会性も必要となる。いわゆる、企業の社会的責任であり、21世紀に入ってからはCSRとも呼ばれている。しかし両者には共通点もあるが、相違点もある。更に、三方よし、CSV、戦略的CSRなど、類似概念も多数存在する。これらの関係の整理を試みたものが『社会的責任とCSRは違う!』であるが、無論、managemetrics の精神も忘れず、HOWとして、CSP−CFP(Corporate Social Performance vs. Corporate Financial Performance)分析の続編も掲載している。
また、テキストとしては恩師である清水龍瑩先生の門下生4人[岡本大輔・古川靖洋・佐藤和・馬塲杉夫]による共著『深化する日本の経営』 ―社会・トップ・戦略・組織― Revisiting Japanese Managementがある。
以上の5冊及びその他の著作については、 岡本大輔の著書論文等一覧を参照されたい。